2014 Fiscal Year Annual Research Report
高原子価ルテニウム(IV)-オキソ錯体による高活性な触媒酸化反応系の構築
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14J02424
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大図 慎吾 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ルテニウム / ピリジル配位子 / 酸化反応 / 混合原子価状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、活性種としてあまり注目されていないルテニウム(III)-ヒドロキソ錯体の水中における反応性について検討を行った。まず、5座ポリピリジル配位子PY5Me2 (= 2,6-bis{1,1- bis(2-pyridyl)ethyl}pyridine)を有するルテニウム(II)-アクア錯体を電解酸化し、ルテニウム(III)-ヒドロキソ錯体を生成させ、それを酸化活性種として、アスコルビン酸やヒドロキノン誘導体、及びそれらの重水素化体を基質とした酸化反応を行った。その結果、基質濃度に対して見かけの速度定数が飽和挙動を示し、基質と酸化活性種との間に、水素結合によるアダクト形成平衡の存在が示された。2,5-ジクロロヒドロキノンを基質とした場合、同位体効果は1.7であることから、HATが律速過程に含まれることが示唆されたのに対し、酸化電位が低いヒドロキノンなどを基質に用いた場合には、反応速度が大きく同位体効果も示さないため、ET機構で反応が進行するものと考えられる。また、速度定数の対数を電子移動のドライビングフォース(-ΔGET)に対してプロットした結果、-ΔGETが大きくなっていく際に、-ΔGET ~ +0.5 eVにおいて、基質反応の律速段階がHATからETへと切り替わることが明らかになった。 また、今年度は、架橋部位としてピリミジンを有する、ピリジルメチルアミン2核化配位子、bpmpm (= 4,6-bis[(N,N- bis(2'-pyridylmethyl)amino)methyl]pyrimidine)から、ルテニウム(II)4核錯体を合成した。ブチロニトリル中、193 Kで、4核錯体と酸化剤であるアミニウム塩を反応させた際のUV-Visスペクトルにおいて、混合原子価状態に基づく原子価間電荷移動(IVCT)吸収帯が、3当量の酸化剤の添加により近赤外領域に観測された。また、4核錯体のIVCTから得られたパラメーターから、ルテニウム4核錯体を3電子酸化した際に形成される混合原子価錯体は、Robin-Dayの分類におけるクラスII(部分的な電荷の非局在化)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水中におけるルテニウム(III)-ヒドロキソ錯体による基質酸化反応の律速段階が、基質からルテニウム(III)-ヒドロキソ錯体への電子移動のドライビングフォースによって、水素移動過程から電子移動過程へと切り替わることを明らかにした。また、2核化配位子を有するルテニウム(II)4核錯体を合成し、その酸化還元過程において、3種の異なる混合原子価状態が形成されることを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に合成した二核化配位子、bpmpmを用いて、ルテニウム(IV)-オキソ部位を含むヘテロ2核錯体を構築する計画である。このヘテロ2核錯体では、強いルイス酸であるコバルト(III)錯体が、ピリミジン架橋を挟んでルテニウム(IV)-オキソ錯体に配位することで、ルテニウム(IV)-オキソ錯体の還元電位を高電位シフトさせ、その結果、ルテニウム(IV)-オキソ錯体部位の酸化活性(BDE)が向上すると考えられる。これにより、メタンを始めとするアルカン類などの、BDEが大きなC-H結合の触媒的酸化反応を目指す。また、このヘテロ2核錯体によるメタン分子を基質とした酸化反応を、速度論的に解析することで、メタンの酸化反応機構を明らかにする計画である。
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Research Products
(3 results)