2014 Fiscal Year Annual Research Report
イネ転移因子mPingを介した転写因子発現促進ループの構築
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14J02449
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 加奈子 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | イネ / 転移因子 / 遺伝子発現 / 挿入変異 / 大規模解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ転移因子mPingの転移活性が高い品種銀坊主集団から、目的のmPing挿入変異を選抜できれば、これらの遺伝資源を効率的に利用できる。これまでの研究から、葉身由来DNAを用いたmPing挿入部位の同定では次代に遺伝しない挿入が多く検出され非効率的である、また、mPing挿入による遺伝子のストレス応答性の増幅効果が植物体の耐性を向上させるには不十分である、という2つの問題点が生じた。 本年度は分蘖間キメラに影響されないmPing挿入パネルを再構築するために、銀坊主10,560個体の穂軸からDNAを抽出し、1,536個体について8個体/バルク毎にmPing隣接配列をシークエンスし、mPing挿入部位を同定した。全50,629個の挿入部位が検出され、全バルクで検出された挿入は477個、1バルクのみで検出された挿入は36,124個であった。供試した銀坊主のmPingコピー数は推定約500コピーであり、結果と一致している。また、遺伝子内部への挿入は8,088個、転写開始点上流500bp以内の挿入は6,512個であった。さらに、14個の挿入についてSCARマーカーを作製し後代での挿入の有無を確認したところ、1個を除き、後代でも挿入が認められ、分蘖間キメラの影響が少ないmPing挿入情報が得られた。 次いで、酵母One-hybrid法により、塩あるいは低温ストレス条件下で発現しmPingに結合する転写因子を選抜した。その結果、塩条件下ではORR1が、低温条件下ではOsbHLH112、OsbHLH143、OsGLK1およびOsbZIP87が候補因子として得られた。ORR1の組換え融合タンパク質を精製しゲルシフトアッセイをおこなった結果、in vitroにおけるmPingへの結合能が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究計画を概ね遂行できた。穂軸由来DNAを用いたmPing挿入パネルの作製により分蘖間キメラの影響が少ないmPing挿入パネルを作製できた。また、シークエンスライブラリーの調製法の検討により、これまでの手法に比べPCR増幅時の偏りが減少し、3割程度であったmPing検出感度を約9割に向上できた。しかし、全10,560個体の銀坊主プールのうち、mPing挿入パネルを作製できたのは1,536個体分であった。これは、十分なリード数を確保した上で高解像度なmPing挿入情報を得るために、1バルクにつき1インデックスを割り当てた次世代シークエンスライブラリーを作製し、シークエンス解析1回あたりのサンプル数を制限したためである。本解析によりシークエンス1回あたりのインデックス数を2~3倍にした際に十分なリード数が確保できると考えられたため、今後は1回のシークエンスで解析可能なサンプル数を増やすことで全サンプルについてのmPing挿入パネルの作製を目指す。 mPingを認識する転写因子の同定では、計画通り候補因子を同定できた。各候補因子の過剰発現体イネを作成中であり、27年度は候補因子がmPing挿入に及ぼす影響を解析できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、計画に従って、mPingを認識する転写因子のmPing挿入を介した転写制御を解明し、育種への応用を目指す。まず、ORR1、OsbHLH112、OsbHLH143、OsGLK1およびOsbZIP87の過剰発現体イネを作製し、それらのトランスクリプトームを解析することで、候補因子のmPing挿入を介した遺伝子の転写制御の全容を解明する。さらに、候補因子のプロモーター領域にmPing挿入をもつ個体をmPing挿入パネルから選抜し、同因子が自身のプロモーター上のmPingを介して自身の発現を促進するというループを形成させる。発現促進のループが形成できれば、任意のmPing挿入型プロモーターを組み合わせることで、任意の遺伝子発現を飛躍的に増幅できると期待される。また、26年度にmPing挿入パネルを作製できなかった9,024個体についてmPing挿入部位を解析し、mPing挿入パネルの完成を目指す。そして、これまでの成果を取りまとめ、論文として発表する。
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Research Products
(1 results)