2014 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナ熱活性型レトロトランスポゾンの制御機構
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14J02452
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松永 航 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / トランスポゾン / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シロイヌナズナにおいて同定された熱活性型レトロトランスポゾンONSENの活性制御機構を解明することを目的とした。そこで、(1)形質転換体を利用したONSENのプロモーター解析、(2)組織特異的なONSENの転写解析、(3)ONSENインテグラーゼ相互作用因子解析、の3つの側面から研究を行った。(1)では、ONSENの転写制御機構を解明するため、プロモーターとして機能しているLong terminal repeat (LTR)全長配列を、GFPをレポーター遺伝子とした形質転換体を作製した。ONSENはsiRNA生合成経路の変異体で発現レベルが上昇するため、得られた形質転換体とsiRNA生合成経路の変異体(nrpd1)と交配した。熱ストレス処理直後、及び常温に戻してから3日後のGFP蛍光を観察したところ、ストレス処理直後は野生型バックグラウンドと比較して、nrpd1では高いレベルの活性化が観察された。しかし、3日後では両者とも活性は観察されなかった。また、組織特異的なGFPの活性は観察できなかった。さらに転写関連因子同定のため、これら形質転換体にEMS変異原処理を行い、変異集団の中からスクリーニングを行い、常温においてもGFP発現が確認された変異体をいくつか得ることができた。(2)については、レーザーマイクロダイセクションを用いて茎頂よりRNAを抽出し、定量PCRを行った。熱ストレス直後は茎頂においても、野生型に比べてnrpd1において発現レベルが高かった。しかし、熱ストレス処理後、常温に戻してから5日後では転写レベルが元に戻った。(3)では、転移関連因子同定のため、共免疫沈降、質量分析を行ったが、反復実験において再現性のある結果が得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)形質転換体を利用したプロモーター解析、(2)組織特異的な転写レベルの解析、(3)インテグラーゼ相互作用因子の同定、の側面から研究を行い、一定の成果が挙がったと考えている。(1)においてはレトロトランスポゾンONSENのプロモーター活性の組織特異性、活性の抑制機構等を解析するため、形質転換体を作製した。当初の計画通り、nrpd1との交配を行い、F2集団よりnrpd1変異を持つ形質転換体を得ることができた。GFPの観察からはONSENのプロモーター活性に組織特異性をみることはできなかった。しかし、今回はシロイヌナズナの特定の成長時期における活性のみを観察しているため、仮説としてあった茎頂分裂組織(SAM)特異的な活性制御機構の存在は否定できない。また形質転換体のEMS変異集団中より、常温でもGFP活性のある変異体をいくつか得ることができた。これにより、転写抑制因子の同定を目指す。(2)においては、レーザーマイクロダイセクションを利用した実験手法を確立し、転写活性の検出が可能になったため、今後実験条件を変化させ、解析を行っていく。(3)においては、質量分析によって候補タンパク質群を同定したものの、反復実験において再現性のある結果が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、レトロトランスポゾンONSENの活性制御機構を解明することが目的である。野生型においても熱ストレスによって転写は活性化するが、siRNA生合成経路変異体(nrpd1)では転写量が増加し、次世代において高頻度な転移が観察される。熱ストレスは生育初期に与えているため、組織特異的あるいは時期特異的な活性制御機構の存在が示唆されている。今後も、(1)形質転換体を利用したプロモーター解析、(2)組織特異的な転写レベルの解析、(3)インテグラーゼ相互作用因子の同定、の側面から研究を行っていく。(1)においては、EMS変異集団中より、常温でもGFPの活性が検出された個体をいくつか単離しており、原因遺伝子特定のためマッピングを行っていく。(2)においては、より正確に茎頂分裂組織(SAM)の切片を作製するため、実験操作の改善を行い、反復実験を行う。また、熱ストレス時期やサンプリングの時期を変更し、解析を行う。(3)については、抗体の特異性を高めるため、新規に抗体を作製し、免疫沈降、質量分析を行う。
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Research Products
(3 results)