2014 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマの空間的不均一性理解による液中レーザー誘起ブレークダウン分光法の精度向上
Project/Area Number |
14J02461
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 歩 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | レーザー誘起ブレークダウン分光法 / レーザーアブレーション / 液相レーザーアブレーション / レーザープラズマ / 電解析出 / 高感度分析 / 定量分析 / 多元素同時分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
液中レーザー誘起ブレークダウン分光法の精度向上を目的として、以下の課題に取り組んだ。 1. これまでに、液中金属イオンを電解析出によって電極表面に濃縮してからレーザーを照射すると、検出感度が大幅に向上することを報告している。本研究では、この手法を使った定量分析の可能性を検討するために、5、10、15、30、50 ppmのZnイオンを含む水溶液中でCu電極上に電解析出を行い、発光スペクトルを測定した。濃度に対してZnの発光線強度をプロットし、検量線を作成した。このとき、析出条件やレーザー照射条件、観測する発光線を適切に選ぶことによって、精度の高い検量線を得ることに成功した(決定係数0.974、検出限界0.35 ppm)。 2. 多元素定量分析を行う上で、発光スペクトルから求まるプラズマの組成がターゲットの組成と一致しないことが問題となっている。そこで、レーザー照射によるターゲット表面の熱伝導と構成原子の蒸発速度差を考慮した理論を構築し、蒸発過程における組成変化の補正を試みた。Zn/Cu = 1.0のCu-Zn皮膜をターゲットとした場合、発光スペクトルから求まるプラズマの組成はZn/Cu = 5.3となった。これに対して、組成変化の補正を行うと、高い精度でターゲットの組成を再現することができた(Zn/Cu = 0.93)。 3. 水中Cuターゲットのレーザーアブレーションを行い、ターゲット表面に対して上方向(レーザー照射方向)と横方向からプラズマの発光を検出した。その結果、上方向から発光を検出すると、発光線の自己吸収の影響が小さく、定量性の高い発光スペクトルが得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、液中レーザー誘起ブレークダウン分光法の精度向上を目的として、電解析出を利用した液中金属イオンの高感度分析を行った。この手法は、微量金属イオンの析出過程や薄膜のアブレーション過程を含むため、定量分析が困難であると考えられる。これに対して、析出条件やレーザー照射条件について検討し、高精度な定量分析の可能性を示したことは、重要な成果であると考えられる。また、蒸発過程における組成変化を補正する新たな理論を構築した。複雑なアブレーション過程を単純なモデルで記述し、多元素定量分析における問題を解決する手段を提案したことは、大きな進展であると考えられる。さらに、プラズマの発光をターゲット表面に対して上方向から検出することで、定量性の高いスペクトルが得られることを見出した。上方向から発光を検出する場合、レーザー照射方向と検出方向を一致させることができるため、装置の小型化にもつながる。これらの結果は、液中レーザープラズマの生成メカニズムに新たな知見を与えるとともに、液中レーザー誘起ブレークダウン分光法の精度向上に貢献するものであり、研究が順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高精度な多元素定量分析の実現を目的として、以下の課題に取り組む予定である。 1. 発光スペクトルからプラズマの組成を推定する際は、熱平衡プラズマ(構成原子の温度が一定)を仮定する。この仮定は、プラズマが周囲の液によって微小領域に閉じ込められ、高密度になるという定性的な判断に基づいている。これまでに、水中微小プラズマの熱平衡状態を調べた例はなく、熱平衡からのずれが組成の推定精度を低下させていると考えられる。そこで、構成原子の温度を元素ごとに測定し、プラズマの熱平衡状態を評価する。また、熱平衡からのずれが小さいプラズマを生成する、もしくは検出するための最適な条件を探索する。 2. 液中レーザー誘起ブレークダウン分光法において、元素分析に適した先鋭な発光線を得るためには、パルス幅の長いロングパルス(約100 ns)を照射する必要がある。この場合、パルス照射中に生成するプラズマが、残りのレーザーのエネルギーを吸収するため、ターゲットに与えられるエネルギーが小さくなる。そのため、蒸発過程が支配的なアブレーションが起こり、沸点の低い元素が優先的に蒸発すると考えられる。一方で、ターゲットに与えられるエネルギーを大きくすれば、構成原子の蒸発速度差が小さくなることがわかっている。そこで、先鋭な発光線が得られるパルス幅を保持したまま、レーザーのビームプロファイルを変化させて、ターゲットに与えられるエネルギーを制御することを試みる。これにより、アブレーション過程における組成変化を抑制したいと考えている。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Fundamental Study and Application of Complex Interfacial Phenomena Using Optical, Electrochemical and Theoretical methods2015
Author(s)
Ayumu Matsumoto, Ayaka Tamura, Kazuya Kobayashi, Yoichi Ikeda, Atsushi Kawasaki, Tatsuya Kakinami, Seiji Katakura, Kazumasa Sasao, Ken-ichi Amano and Naoya Nishi
Organizer
The Kyoto University SGU-CH 1st International Workshop - Micro/Flow Chemistry & Engineering -
Place of Presentation
Katsura Campus, Kyoto University, Kyoto, Japan
Year and Date
2015-01-28 – 2015-01-29
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