2015 Fiscal Year Annual Research Report
高分子鎖を自在に築きあげる精密重合:形態に基づく機能創発を目指して
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14J02544
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上宮田 源 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 精密重合 / リビング重合 / 環拡大重合 / 環状高分子 / カチオン重合 / トポロジー / リングポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究員は,環状高分子を簡便かつ効率的に合成する手法として,「環拡大リビングカチオン重合(RE-LCP)」を見出した。本手法は,ヘミアセタールエステル結合を環状分子内に組み込み,ルイス酸触媒を用いて可逆的に炭素カチオンと対アニオンを発生させ,ビニルエーテル(VE)を挿入し大環状構造の高分子を得る手法である。ブロック共重合が可能なほど本質的な重合制御性は高く,得られる高分子鎖は環状であることがわかっているが,重合中に環状ポリマー同士が融合し分子量分布が大きくなる問題があった。そこで本年度は,分子量の揃った環状高分子の合成手法を確立すると共に,環状グラフト共重合体の構築に取り組んだ。 平成27年度は,以下2点で成果を得た。 (1)分子量の揃った環状高分子の精密合成:従来,分子間の高分子間反応により単分散の環状高分子を得づらいという問題があったが,分子間反応を抑えるため希釈条件で行うと重合が進行しないというトレードオフの関係にあった。本研究員は本問題を解決する手法として,巧みに重合後に分子内反応を誘発する “後希釈”を考案した。本手法では,触媒存在下環状ポリマーを希釈すると活性点同士が分子内で動的に組みかわり,分子量分布の広い環状高分子が,一定の分子量に収斂していき,時間とともに単分散に近くなることを見出した。 (2)環状グラフト共重合体の構築:ナノスケールのドーナツ状高分子である環状グラフト共重合体は,その環サイズを反映した自己組織化構造を形成すると期待される。そこで,環拡大リビングカチオン重合で用いるVEに対して,リビングラジカル重合(LRP)開始点を導入し環拡大重合することで,環状高分子型の開始剤を合成した。本高分子鎖を用いてメタクリル酸メチル(MMA)のLRPを行うことで,環状主鎖骨格から多数の高分子鎖が側鎖に連結した環状グラフト共重合体の合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,最終年度に予定している環状高分子からさらに派生する環状高分子誘導体の構築に向けて,その基盤となる手法を確立できた。具体的には,単分散に近い環状高分子を得る手法を確立した点,環状高分子側鎖にグラフト鎖を導入出来た点は,今後の研究展開の鍵となるであろう。以上の理由より,当該研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の平成27年度の結果に基づき,平成28年度は環状構造から派生する誘導体の合成と,それら高分子の環状構造に基づく機能の発現を目指す。 (1)さまざまな環状グラフト共重合体の合成:環拡大重合がブロック共重合可能である点,さらに後希釈法で単峰性環状高分子の合成が可能になった点を活かすと,例えば環の半分がグラフト鎖を持つ環状高分子や,側鎖のグラフト鎖がブロック共重合体となった高分子を合成する。それらをAFM等で測定することにより,環状高分子一分子での形態や,環状高分子が積層し自己組織化した構造体の観察を予定している。 (2)環状ブロック共重合体の構築:本環拡大重合が多様なビニルエーテルを用い種々の環状高分子を与えることに着目し,これらをブロック重合することにより,異なる性質を有するセグメントが環に配置したジブロックを得る。これらを溶液やバルクでの挙動を観測し,直鎖と比較してどのように異なるかを明らかにする。さらに,これまでに例のない環状トリブロック共重合体の合成及び物性測定にも挑戦する。
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