2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J02632
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
榊原 大貴 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | カービング氷河 / パタゴニア氷原 / グリーンランド / 氷河変動 / 氷河流動 / 人工衛星データ / アルゼンチン / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は人工衛星データ解析および野外観測を実施した。 (1) 人工衛星データ解析 世界に先駆けて、南パタゴニア氷原全域のカービング氷河の末端位置と流動速度の変化の測定を完了した。1984年から2011年に撮影された300枚以上の人工衛星データを用いた解析の結果、多くのカービング氷河が過去20年間に後退していることが明らかになった。そのうち3氷河では、5 km以上の急速な末端後退と同時に流動の加速が確認された。以上の結果は、カービング氷河の急速な後退に流動加速が重要な役割を果たしていることを裏付けるものである。本成果を2014年に国際的な学術雑誌に論文として出版した。また、グリーンランド北西部のカービング氷河においても、パタゴニアと同様に末端変動と流動速度を観測した。解析の結果、対象とした氷河全てが2000年以降後退しており、大気・海洋の温暖化が後退の引き金となった可能性が示唆された。現在国際学会誌への投稿に向けて原稿を準備中である。 (2) 野外観測 2014年9月28日から10月26日にかけて、急速な後退が明らかとなったウプサラ氷河において野外観測を行い、氷河前縁湖の湖底地形を測量した。観測の結果、ウプサラ氷河の急速な後退には氷河底面の地形が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。本成果は国内学会で発表し、国際学会誌への投稿に向けて原稿を準備中である。また2014年6月25日から8月9日にかけて、GRENE北極気候変動研究事業の一環として、グリーンランド氷床北西部ボードイン氷河にて野外観測を実施した。観測の結果、カービング氷河の流動が末端部の変化に敏感に応答することが明らかとなった。本成果は2015年に国際的な学術雑誌に論文として出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は当初の計画に沿って、人工衛星データ解析および野外観測を実施した。 人工衛星データ解析に関しては、研究対象地域である南パタゴニア氷原およびグリーンランド北西部においてカービング氷河の末端位置と流動速度の測定を完了し、当初予定していた目標を達成することができた。独自に構築した流動速度測定のプログラムで解析を行うことで、先行研究と比較して高い時間分解能で流動速度変化の解析が明らかとなった。南パタゴニア氷原における研究成果は、国内外の学会で発表し、国際的な学術雑誌に論文として出版済みである。また、グリーンランド北西部における研究成果も国内学会にて発表し、国際学会誌に論文を投稿準備中である。 次に野外観測に関しては、当初の計画に沿って、南パタゴニア氷原およびグリーンランド北西部で野外観測を実施した。南パタゴニア氷原の観測では、ウプサラ氷河の末端が急速に後退したことによって拡大した氷河前縁湖において水深測量および水塊構造の観測に成功するなど、当初掲げた目標を達成することができた。またグリーンランド北西部のボードイン氷河においても同様の観測を行った。 また、カービング氷河の変動シミュレーションについては報告者がデータを提供し、共同研究者が数値モデルの開発および数値実験に着手している。 以上の状況を鑑みて、平成26年度の研究は目標の成果を挙げたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでに得られた人工衛星データおよび野外観測データの解析を推し進める。その成果を国内外の学会で発表し、国際的な学術雑誌に論文として投稿するとともに、博士論文としてまとめ上げる。 平成26年度までに南パタゴニア氷原およびグリーンランド北西部全域において人工衛星データの解析を終えたことを受けて、その解析結果から氷河後退および流動加速を支配する要因の解明を目指す。またウプサラ氷河を含む変動が大きかったいくつかの氷河では、末端位置と流動速度だけでなく、表面高度にも着目して詳細な解析を行う。これらの人工衛星データから得られる結果と野外観測によって得られた結果を合わせて議論することで、カービング氷河の急速な後退および流動加速を引き起こすメカニズムの解明を目指す。
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Remarks |
北海道大学低温科学研究所研究トピックス
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Research Products
(9 results)