2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノライト晶出による含水マグマの減圧クエンチ:火山爆発に対する役割
Project/Area Number |
14J02753
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
無盡 真弓 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 火道内再溶結 / 核形成 / 成長 / ナノライトの空間群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は,ナノライトの結晶化のタイムスケールを求め,新燃岳2011年噴火の火道浅部における噴火様式の分岐条件を調べることである.採用第1年度に研究を進めていく中で,当初予期していない重要な発見として,石基結晶にはマイクロライト,ナノライトに加え,さらに結晶サイズが小さく,数密度が高いウルトラナノライトが晶出していることが明らかになった.結晶化のタイムスケールを求めるためには,なぜ異なる結晶化ステージの結晶が晶出するのか,そもそもナノライトはどのような特徴を持っているのか,ということについて理解する必要がある.そこで本年度は,FE-SEMを用いた観察に加え,TEMを用いた観察と分析を行い,新燃岳2011年噴火噴出物中の石基ナノライトについて,主に次の三点について成果を挙げた.①結晶化ステージの異なる結晶が晶出する理由についての熱力学的な考察,ナノライトを鉱物学的観点からの詳細な記載をおこなった.②石基の結晶分化過程に対するナノライトの結晶化の役割の解明と,新燃岳2011年噴火での火道内における再溶結過程による溶岩形成の発見をした.③放射光を用いた結像型X線マイクロ-CTによる三次元形態観察を行い,微小結晶の成長段階の多様性を見出した.この中でも,①の研究の中で,結晶化ステージごとに輝石は相(空間群)が,斜長石はAn値が異なることが明らかとなったこと,②の研究の中で,石基の結晶化の指標として既存の結晶(例えば,マイクロライト)『成長』と新たな結晶化ステージ(例えば,ナノライト)の『核形成』の二つが重要であることが明らかになったことは,今後結晶化のタイムスケールを求め,ナノライトの結晶化メカニズムを理解するのに重要な発見である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度にマイクロライト,ナノライトに加え,ウルトラナノライトを発見し,そして本年度に,それら異なる結晶化ステージの結晶化が生じる理由について,熱力学的な考察を行えたことは,本課題を遂行する上で重要な成果である.さらに,結晶学的観点からの詳しい特徴づけを行うことができ,これまではサイズ分布でしかわからなかったナノライトの特徴に,結晶構造(相)という新たな,そして重要なパラメータがあることを明らかにした.また,ナノライトが火道内再溶結過程がおこっていたことの証拠となることを明らかにした点は,当初予期していない発見であり,溶岩形成過程に関して知見を与えたという点で、岩石学的・火山学的な応用面として重要な成果である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,異なる結晶化ステージの結晶化が生じることの熱力学的な考察についての論文をまとめる.つぎに,ナノライトから明らかとなった,火道内再溶結過程に関しての論文を書くために必要なデータ収集を行い,論文にまとめる.具体的には分析する火砕成溶岩片の数を増やす.そして,時間に余裕があれば,ナノライトの減圧結晶化実験を行い,ナノライトの結晶化条件を制約する.
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Research Products
(8 results)