2014 Fiscal Year Annual Research Report
レプトスピラ症を初めとするげっ歯類媒介性人獣共通感染症の迅速簡易診断法新規開発
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14J02846
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
塩川 愛絵 北海道大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 組換え抗原 / 血清学的診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性レプトスピラにのみ共通する菌体抗原LipL32を組換え抗原として、大腸菌、酵母、Brevibacilusにて発現させた。またLip32を認識するモノクローナル抗体を用いて、LipL32の主要抗原領域を明らかにした。その上で、主要抗原認識部位を含むLipL32の短縮組換え抗原を作成した。短縮抗原は、全長抗原に比べて構造の安定化が期待された。作成した各組換えLipL32抗原は、抗LipL32モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットにて発現を確認し、血清との反応性を、ヒト患者血清および実験感染ラット、野生ラット血清を用いたIgG検出系ELISAにて行った。その結果、大腸菌発現全長組換えLipL32抗原はたんぱく質としての安定性がないことが明らかとなり、また酵母では全長のLipL32遺伝子での組換えは起こらなかった。さらに、大腸菌発現短縮LipL32抗原を利用したELISAでは野生ラットの血清診断で高い非特異反応が問題となったが、この非特異反応は、血清の大腸菌吸着による事前処理にて軽減された。酵母発現短縮LipL32抗原、およびBrevibacillus発現の全長および短縮LipL32抗原では野生ラット血清診断時に非特異反応は観察されなかった。今後はこれら組換えLipL32使用イムノクロマトグラフィーの条件検討を進め、野生ラットレプトスピラ感染症迅速スクリーニング法への応用を試みる。 ヒト患者の血清では、大腸菌、酵母、Brevibacillus発現による短縮LipL32抗原を利用したIgG検出系ELISAにて反応性を確認済みである。しかしながら、IgM検出系ELISA では、LipL32のモノクローナル抗体が認識する主要抗原領域を、ヒト患者血清中のIgM抗体も認識している可能性が示唆された。そのため、現在、Brevibacillus発現全長LipL32を用いたIgM検出系ELISAの条件検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はほぼ予定通りに研究が進行した。LipL32の抗原部位の特定、さらに大腸菌および酵母発現系、Brevibacillus発現系での抗原発現が出来ている。組換え抗原発現ベクターを選択することにより、野生ラット血清に対してより非特異反応の低い組換え抗原を開発することができた。酵母発現抗原やBrevibacillus発現抗原では血清事前処理無しでも、大腸菌発現抗原より非特異反応が低く、大腸菌に比べて発現効率も良いため、より優れた組換え抗原であると考えられた。ヒト血清でも同様に大腸菌発現抗原への非特異反応が血清の大腸菌吸着による事前処理にて軽減されることが報告されており、事前処理の必要がない酵母発現抗原やBrevibacillus発現抗原はヒト血清を対象とする診断抗原としての有用性も示唆された。現在Brevibacillus発現系によって改良を加えた抗原を発現させ、評価の最終段階に入っている。次年度中には当初の予定通り、レプトスピラ流行地での現地調査に技術応用が可能であると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、酵母発現短縮LipL32、Brevibacillus発現全長および短縮LipL32を利用し、ヒトレプトスピラ症の早期血清学的診断法、イムノクロマトグラフィー法を利用したラット血清中抗レプトスピラ及び抗ハンタウイルスIgGの同時検出の開発を行う。予定通り、ハンタウイルス感染症検出にはHS103 (Amada.T et al., 2013, Journal of Virological Methods) を用いる。 さらに、ヒトレプトスピラ症の早期血清学的診断法は、抗LipL32モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが3株(D14/2, Y22/1, D58/3)あり、それぞれのエピトープ認識部位の違いを検討した上で本診断手法開発に最適な株を選定する。またはこれらの株の組み合わせにより、より高感度高特異度を示す診断法の解析を目指す。診断法の条件検討後、フィリピン洪水発生時ヒト血清を用い、感度・特異度の測定、解析を行う。 また、ラット血清診断用イムノクロマトグラフィー法の開発は、今後、より高い感度、特異度を得るため、金コロイドの代わりにセルロースナノ微粒子も利用する。展開膜への各組換え抗原固定量、金コロイドおよびセルロースナノ微粒子量、コンジュゲート抗体量及び各溶媒のpH検討を予定通り行う。 スリランカの共同研究先との調整後、本年度中に技術移転も含めてスリランカ側のスタッフと共に研究を進め、野外調査でのげっ歯類スクリーニング法の実用性について検討する。
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