2014 Fiscal Year Annual Research Report
クライオ透過型電子顕微鏡を用いた水和多糖の構造解析
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14J02928
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 加代子 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 多糖 / 結晶構造 / 透過型電子顕微鏡 / 水和構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物細胞壁の主成分であるセルロースや澱粉に代表される天然多糖の多くは結晶性の物質として存在する。しかしながら構造の解析に適した試料を調製することが難しく、未だその構造が明らかにされていないものも多い。さらにそのうち大部分は水分子を結晶格子内に取り込んだ水和型結晶を形成することが知られている。従って本研究では水を含んだ状態を保ちながらクライオ電子顕微鏡等による測定を行い、水和多糖の構造や特性を解明することを目的としている。本年度はα-1,3/α-1,4-グルカンであるニゲラン結晶の解析および低温における水和多糖の熱膨張挙動についての研究を行った。具体的な内容を以下に示す。 コウジカビの一種からニゲランを精製し、再結晶化させることによって得られたラメラ結晶を用いて電子顕微鏡観察を行った。得られた電子線回折図は、単結晶のパターンではなくひとつのラメラ結晶中に異なる配向のドメインが複数含まれることを示唆していた。そこで結晶中のドメイン構造を可視化するために高分解能像や暗視野像観察を試みようとしたが、ニゲラン結晶はセルロースやキチンなどの結晶性の高い多糖と比較して電子線による損傷を予想以上に受けやすく、このような観察手法を用いることは困難であることがわかった。そこで染色法やシャドウイング法による形態観察を行い、得られた画像を系統的に解析することで、ドメイン構造と結晶中に生じるクラック、そして電子線回折より得られる結晶構造の関連を調べている。 水和多糖の水分子を結晶格子内に保ちながら電子顕微鏡観察を行う際には、試料を凍結させた上で低温下において測定を行う。従って水和多糖が温度変化によってどのような挙動を示すかという知見は非常に重要であり、X線回折測定によりアミロースやβ-1,3-グルカンの結晶構造の変化を調べた。本年度は、これらの成果について学会発表を行ったほか、現在論文を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、まず当初の計画に沿って電子顕微鏡の理論と技術を習得し、水和多糖の構造解析に取り組んだ。しかしながら用いた試料は非常に電子線損傷を受けやすく、当初の計画通りの観測は困難であることが判明した。そこで画像解析などの新しい切り口で、結晶構造の可視化および系統的な解析を試みている。 以上より、本年度は当初の計画通りには進まない点が判明した一方で、新たな取り組みを始めることができた。また電子顕微鏡観察に関連する一連の技術は本年度中にほぼ習得することができたと考えており、今後はより円滑に実験を進めていくことができるのではないかと期待している。従って、本研究は概ね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
電子顕微鏡を用いた解析については、少なくとも本年度に用いたニゲラン結晶に対しては当初の計画に沿った測定方法の適用が困難であることが判明した。今後、他の多糖試料に対しては再度同様の測定を試みる予定ではあるが、本研究の目的を達成するためには新たな手法を模索していく必要がある。 そこでまず本年度に試みたのがテクスチャ解析等の画像解析を用いる手法である。現在解析を進めているところであり、引き続き検討していく予定である。また結晶ドメインの解析については中性子小角散乱法、結晶構造の解析にはX線粉末回折法が適用できるのではないかと考えており、今後それらの手法についても検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)