2015 Fiscal Year Annual Research Report
衛星・地上観測による巻雲の微物理・光学特性の実態解明
Project/Area Number |
14J02947
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齊藤 雅典 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 巻雲 / リモートセンシング / デジタルカメラ / 衛星観測 / 雲判別 |
Outline of Annual Research Achievements |
巻雲は対流圏上部に出現する薄い氷雲であり、それらの量や粒子の形や大きさは千差万別で実態はよくわかっておらず、地球の放射収支の不確実性を増大させる要因であることが知られている。特に氷粒子の粗度は、その値によっては産業革命以降の温室効果ガス増加による放射収支の変化と同程度のインパクトを持っており、これらの観測的研究が、放射収支の不確実性低減に貢献すると期待される。申請者は本年度、極軌道衛星と、一昨年に打ち上げられた静止気象衛星衛星搭載測器を用いた巻雲の微物理特性の解析システムの開発と解析に携わり、主に放射伝達モデルの精度評価、逆問題解法コード開発、リトリーバル誤差評価を行った。これらの開発は完了している。 また、デジタルカメラを地上観測に応用し、可視域の分光放射輝度スペクトルを導出する手法を開発した。前年度に続いて検証を行い、デジタルカメラから導出した空のスペクトルは、他の測器から得られた結果と整合することが確認された。これらの成果は国際科学誌に論文として出版した (Saito et al. 2016)。加えて、この技術を応用して雲判別アルゴリズムを開発した。従来の手法では、太陽周辺光と巻雲などの薄い雲を区別できなかったが、本研究で提唱した晴天指数とカメラのRAW画像を用いることによって、その区別を可能にした。これらの成果は国内外の学会等で発表し、国際学術雑誌に論文を投稿中である。 氷粒子の形状に着目した巻雲の微物理特性の解析システムの開発については、計画の一部を変更した。年間を通じて行った文献調査の結果、複数の衛星搭載測器を用いることで、本研究の目標達成の可能性をより高めることがわかったためである。すでに開発済みの極軌道衛星用アルゴリズムをベースにアリゴリズム開発を行うため、研究の遅延は生じない見込みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地上観測測器を用いたアルゴリズム開発では、当初の予定以上に進展し、デジタルカメラの応用技術開発に関する論文を1本執筆し、1本は投稿中である。また、本研究の実現可能性をより高めるために生じた若干の研究計画の変更によって、地上観測アルゴリズム開発は本年度で終了となる。 衛星観測測器を用いた巻雲の微物理特性抽出アルゴリズム開発は、本年度で、極軌道搭載衛星と静止気象衛星搭載測器用のそれぞれについて開発を完了した。また、計画の変更で新たに開発するアルゴリズムは、複数の衛星搭載センサを用いたものとなっており、極軌道搭載衛星用のアルゴリズムを発展させる形で開発を行っているため、研究の遅延は生じない見込みである。現在、理論の構築は完了し、アルゴリズム開発の半分以上の行程を終了している。来年度は予定どおり巻雲の氷粒子の形状に着目した全球解析を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
巻雲の氷粒子の形状の全球分布、他の光学特性との関係性に着目して、衛星のデータ解析を行う予定である。アルゴリズム開発の目処は立っており、来年度第一四半期内に開発を完了する見込みである。アルゴリズム開発に必要不可欠な氷粒子の散乱特性データは、研究滞在先(次年度10月末まで)のテキサスA&M大学と共同で開発を行う。データ解析内容は、全球における巻雲の微物理特性、氷粒子の形状、粗度の統計解析と地理的分布、気象要素との相関を調べる予定である。これらの成果を論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿する。
|
Research Products
(4 results)