2016 Fiscal Year Annual Research Report
組織の恒常性維持における生理的な細胞老化の調節・除去機構の解明
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14J02966
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江頭 真宏 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 女性不妊 / 子宮内炎症 / プロゲステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は、分娩後子宮において存在する老化細胞周囲にマクロファージが集積し、老化細胞の除去に関与していること、老化細胞の過剰な蓄積は子宮機能異常を誘導することを明らかにしている。本年度において、申請者は老化細胞の過剰な蓄積をもたらす子宮内微小環境の解明とその改善を試みた。まず、申請者が前年度までに確立した、老化細胞を過剰に蓄積するマウスモデルの産褥子宮において、炎症亢進性遺伝子クラスタの発現が顕著に増加していることが示された。さらに、このモデルマウスにおいてはエストロゲン応答性遺伝子の発現が顕著に増加している一方で、プロゲステロン応答性遺伝子の発現が低下していた。プロゲステロンは妊娠の維持において重要なホルモンであり、特に子宮内微小環境の調整に寄与する。そこで、この老化細胞が過剰に蓄積するマウスモデルに対して、申請者は分娩直後からプロゲステロンの投与を行い、その後の子宮内微小環境の変化を調べた。その結果、プロゲステロン投与群ではエストロゲン応答性遺伝子の発現が抑制されたほか、一部の炎症性遺伝子の発現の低下を認めた。このことから、プロゲステロンは子宮内微小環境を改善し、その結果老化細胞の過剰な蓄積を抑制する可能性が考えられた。以上から、申請者は老化細胞の過剰な蓄積の背景として、プロゲステロン/エストロゲンバランスの異常と、子宮内炎症の亢進が存在すること、プロゲステロンがその子宮内微小環境を改善する可能性があることが推測された。子宮内炎症の亢進や子宮内膜の菲薄は不妊の原因として知られており、これらが老化細胞の過剰な蓄積を引き起こしている可能性が考えられる。すなわち、この結果は新たな子宮内不妊因子としての老化細胞の可能性を示唆するものであると考えられ、未だに解明されていない部分が大きい女性不妊の詳細を明らかにするとともに、その治療法の確立に向けて寄与することが考えられる。
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Research Progress Status |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] STAT3 accelerates uterine epithelial regeneration in a mouse model of decellularized uterine matrix transplantation.2016
Author(s)
Takehiro Hiraoka, Yasushi Hirota, Tomoko Saito-Fujita, Mitsunori Matsuo, Mahiro Egashira, Leona Matsumoto, Hirofumi Haraguchi, Sudhansu K. Dey, Katsuko Furukawa, Tomoyuki Fujii, Yutaka Osuga.
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Journal Title
JCI Insight
Volume: 2;1(8)
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] STAT3 is crucial for the entire process of uterine regeneration in a mouse model of decellularized matrix transplantation.2017
Author(s)
平岡 毅大, 廣田 泰, 藤田 知子, 赤枝 俊, 田中 智基, 松尾 光徳, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 原口 広史, 古川 克子, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第69回日本産科婦人科学会学術講演会
Place of Presentation
広島県立総合体育館(広島県、広島)
Year and Date
2017-04-13 – 2017-04-17
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[Presentation] 脱細胞化組織移植技術を用いたマウス子宮再生過程における転写因子STAT3の機能的意義2017
Author(s)
平岡 毅大, 廣田 泰, 藤田 知子, 赤枝 俊, 田中 智基, 松尾 光徳, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 原口 広史, 古川 克子, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第16回日本再生医療学会総会
Place of Presentation
仙台国際センター(宮城県、仙台)
Year and Date
2017-03-07 – 2017-03-09
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[Presentation] 脱細胞化組織移植技術を用いたマウス子宮再生機構の検討2017
Author(s)
平岡 毅大, 廣田 泰, 藤田 知子, 赤枝 俊, 田中 智基, 松尾 光徳, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 原口 広史, 古川 克子, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第21回日本生殖内分泌学会学術集会
Place of Presentation
千里ライフサイエンスセンター(大阪府、豊中)
Year and Date
2017-01-14 – 2017-01-14
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[Presentation] Role of STAT3 in the endometrial regeneration in a mouse model of decellularized matrix transplantation.2016
Author(s)
平岡 毅大, 廣田 泰, 藤田 知子, 赤枝 俊, 田中 智基, 松尾 光徳, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 原口 広史, 古川 克子, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第39回日本分子生物学会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県、横浜)
Year and Date
2016-11-30 – 2016-12-02
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[Presentation] 低酸素誘導因子HIFが着床を調節する2016
Author(s)
松本 玲央奈, 廣田 泰, 藤田 知子, 原口 広史, 江頭 真宏, 松尾 光徳, 平岡 毅大, 田中 智基, 武田 憲彦, 大須賀 穣, 藤井知行.
Organizer
第61回日本生殖医学会学術講演会・総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県、横浜)
Year and Date
2016-11-03 – 2016-11-04
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[Presentation] 黄体ホルモン製剤レボノルゲストレルによるLIFを介した着床阻害機構.2016
Author(s)
松尾 光徳. 廣田 泰, 藤田 知子, 原口 広史, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 平岡 毅大, 赤枝 俊, 田中 智基, 藤田 英俊, 本道 栄一, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第61回日本生殖医学会学術講演会・総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県、横浜)
Year and Date
2016-11-03 – 2016-11-04
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[Presentation] 脱細胞化組織移植のマウスモデルを用いた子宮内膜再生におけるSTAT3の役割.2016
Author(s)
平岡 毅大, 廣田 泰, 藤田 知子, 赤枝 俊, 田中 智基, 松尾 光徳, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 原口 広史, 古川 克子, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第61回日本生殖医学会学術講演会・総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県、横浜)
Year and Date
2016-11-03 – 2016-11-04
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[Presentation] レボノルゲストレルはLIF低下を介して着床を阻害する -プロゲスチンによる避妊作用の新たな機序-2016
Author(s)
松尾 光徳, 廣田 泰, 藤田 知子, 原口 広史, 江頭 真宏, 松本 玲央奈, 平岡 毅大, 赤枝 俊, 田中智基, 藤田 英俊, 本道 栄一, 大須賀 穣, 藤井 知行.
Organizer
第34回日本受精着床学会総会・学術講演会
Place of Presentation
軽井沢プリンスホテル(長野県、軽井沢)
Year and Date
2016-09-15 – 2016-09-16