2015 Fiscal Year Annual Research Report
生細胞イメージングによるERK MAPK経路におけるシグナル伝達動態の定量解析
Project/Area Number |
14J03140
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新土 優樹 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞内情報伝達 / 核移行 / スイッチ応答 / 数理モデル / セミインタクトアッセイ / ヌクレオポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
ERK (extracellular signal-regulated kinase) は、細胞増殖や分化、細胞死などの細胞運命決定を担うタンパク質キナーゼである。本研究では、増殖因子刺激に対するERKの応答特性を詳細に明らかにすることを目的としている。 26年度までに、次に示す4点の成果が得られていた。1. ERKのリン酸化は増殖因子刺激の強度に対してほぼ線形に応答する。2. リン酸化に引き続いて起こるERKの核移行はスイッチ応答を示す。3. ERK核移行のスイッチ応答が、ERK自身の活性に依存している。4. ERKの活性に依存したERKの核移行の制御は、ヌクレオポリンを介したものである。 これらの結果をもとに、27年度は以下に示す3点の新たな結果を得た。1. ERK核移行のスイッチ応答が、複数種類の刺激や細胞種で観察される一般性の高い現象であることを確認した。2. 数理モデルを用いた解析から、ヌクレオポリンを介したERKの核移行制御はスイッチ様の核移行応答を生むメカニズムたりうることを示唆した。3. ヌクレオポリンの1つであるNup153のノックダウン実験から、ヌクレオポリンがERK核移行のスイッチ応答に重要であることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究目標は、1. ERK応答の数理モデル構築、2. ヌクレオポリンがERK応答に与える影響の解析、3. 他の種類の細胞や増殖因子に対するERK応答の解析、の3点であった。 1. に関しては、ODEベースのキネティックモデルを構築し、実験結果をよく再現する数理モデルの構築に成功した。2. については、ヌクレオポリンをsiRNAでノックダウンした際のERK応答を解析し、ERKのスイッチ応答にヌクレオポリンが重要であることを明らかにした。3. についても、HeLa細胞 + EGF刺激、PC12細胞 + NGF刺激の2条件を追加で解析した。 以上のように、本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
プロトタイプとしての数理モデルの構築には成功したが、未知の条件下での予測性能やモデル化手法には課題が残る。今後は、より高精度かつ尤もなモデルを取得し解析するための手法開発を行う。特に、本研究で観察されているような非線形なシステムを、限られた実験データから効率的に同定・理解する方法論を確立することを目指す。
|
Research Products
(2 results)