2015 Fiscal Year Annual Research Report
15-17世紀カシミールのヒンドゥー・ムスリムの知的交流:翻訳文献を手がかりに
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14J03352
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小倉 智史 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | カシミール / 歴史叙述 / 翻訳研究 / ペルシア語文献 / サンスクリット文献 / Perso-Indica |
Outline of Annual Research Achievements |
研究は概ね順調に進展している。当初予定していたイランでの調査は、後述のPerso-Indica 会議に参加するために断念せざるを得なかった。しかし、研究内容のうち『王統記』ペルシア語訳のサンスクリット原典との比較については、いずれも英語で成果を発表することができた。また、『ユースフとズライハー』サンスクリット訳のペルシア語原典との比較については、横地優子教授と共同で成果を発表した。この他にも日本語と英語で都合4本の論文を出版した。特に、ヨーロッパの主要査読誌に英語の論文が掲載されたことで、研究成果を国際的に発信することができた。また、高校の世界史教員向けの雑誌に短文を寄稿するなど、学会の外に研究成果を発表することにも務めた。 更に、採用者は九州大学の斉藤茜女史と共に、2015年9月23日・24日の2日間にわたって、前近代カシミールを主題とする国際ワークショップを主催した。思想・哲学・歴史学・考古学・美術史など、前近代カシミールを研究する様々な分野の研究者が一同に会し、議論を行うことができた意義は大きい。 その他の活動として、国際共同研究プロジェクトPerso-Indicaへの参加が挙げられる。同プロジェクトは、インドの伝統的な学知を扱ったペルシア語文献を網羅的にサーヴェイするもので、毎年の国際会議やワークショップのほか、オランダから全4巻の文献事典(英語)の出版を予定している。採用者は2015年9月にデリーで開かれた国際会議で口頭発表を行ったほか、デリー・サルタナト期の文献を扱う文献事典第1巻に、『王統記』のザイヌルアービディーン宮廷訳など複数の項目を執筆した。執筆した項目は将来第1巻に収録されるほか、近日中にオンライン上でも公開される予定である(http://www.perso-indica.net/)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『ラージャタランギニー』ペルシア語訳、『ユースフとズライハー』サンスクリット訳のテキスト作成、内容の原典との対照が順調に進展していることに加えて、研究成果を国際会議での発表や、ヨーロッパの査読誌への論文掲載という形で公表することができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究がおおむね順調に進展しているため、全体的な研究計画に変更はない。最終年度である2016年度は、『ラージャタランギニー』ペルシア語訳の未校訂部分の校訂テキスト、及び英訳を雑誌上で公表できる段階に持っていく。加えて、国際会議への参加や欧文誌への論文投稿という形で、研究の成果を国際的に発信していくことにも務める。
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Research Products
(9 results)