2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫性水疱症における抗体の皮膚移行と血管壁バリアの関連性の検証
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14J03395
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小野 さち子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 抗体の組織移行 / 抗体の動態 / 天疱瘡 / 自己抗体関連疾患 / 血管壁バリア / 自己免疫性水疱症 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下にそれぞれの目的(1-5)に対する実施状況ならびに成果を示す。1.表皮細胞への抗体沈着を、FACSにて定量的に評価する実験系の確立:マウスに抗デスモグレイン3抗体(AK18)を静注後、耳介を採取。フローサイトメトリーの手法を応用し、表皮角化細胞サブセット(CD49f+CD45-)を分離し、IgG沈着の程度を平均蛍光強度を算出し、定量的に評価を可能とした。2. 炎症の有無での抗体の組織移行タイムコースの検討:AK18静脈注射を行ったマウスの片方の耳介に一次刺激物質であるPMA(phorbol myristate acetate)を塗布し、両耳介のIgG沈着の程度を比較。これによって、定常状態および炎症下における皮膚への抗体移行が経時的に生じ、かつ血中濃度に依存的であることが示された。3. 炎症の強さ、種類、あるいは部位における抗体沈着の違いの検討:炎症の種類(ハプテンによる接触過敏反応、熱傷、光線、tape-stripping、rubbing、ヒスタミン皮下注射)によって抗体沈着がどの程度生じるかを検証。炎症の種類に寄らず、かつ炎症の程度と相関して抗体沈着が増加することが示された。これは、天疱瘡患者において皮疹が創傷、日光露光部、間擦部に生じやすいとする報告と合致し、皮疹の分布を説明した。4. マウスにおける血管壁バリアの完成に要する日数の検討:0~6日齢のマウスにAK18を腹腔内注射し、24時間後の表皮抗体沈着を評価した。生後1-2日目と比較して4-6日頃には抗体が循環より漏出しにくくなることを検出した。これにより、血管壁バリアの成熟が、抗体移行を規定する肝要な因子の一つであることが明らかとなった。5. 皮内水疱形成過程のライブイメージング:マウスに蛍光ラベルしたAK18を投与後、血管からの抗体移行ならびに表皮への沈着過程を、2光子励起顕微鏡を用いて描出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、この一年間、申請内容である自己免疫性水疱症における自己抗体の皮膚移行と血管壁バリアの関連性について研究を進めた。申請者は、申請書に記載した5つの研究項目のうち4つを今年度までに達成し、自己抗体が無刺激下・炎症状態の皮膚へそれぞれどのように移行し、沈着するかのこれまで知られていなかった新たな知見を見出した。さらに、血管内から血管外への抗体移行の詳細なメカニズムを解明すべく、研究内容をさらに広げて実験を進めている。これは、自己抗体関連疾患を扱う免疫学・皮膚科学の臨床分野のみならず、血管壁バリアに対する基礎的な新たな知見を提供し、今後の医学の発展に貢献すると考える。 以上から、おおむね期待通り研究が進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の研究目的5(2光子顕微鏡を用いた皮内水疱形成過程のライブイメージング)について、今後、どのようにして病原性を有する抗デスモグレイン3抗体が皮内水疱形成を誘導するかの生体内での描出を今後の課題としている。また、上述の申請書に記載した1-5の研究達成目標項目に加えて、申請者は新たに、血管からの抗体移行がneonatal Fc receptor (FcRn)と呼ばれる分子に依存するという過去の知見に着目している。FcRnは胎盤、粘膜上皮、血管内皮細胞などに恒常的に発現し、IgGに結合することで、細胞内でのリソソームによるIgGの分解を防ぎ、抗体の細胞内動態を可能とする。これらの知見をふまえ、皮膚への抗体移行(機序についてはこれまで明らかにされていない)と胎盤を経由した胎児への抗体移行(過去の報告より、胎盤のFcRn発現が抗体移行に重要であるであると考えられている)がそれぞれどの程度にFcRnに依存するかを、FcRn機能欠損マウス、ならびにFcRn阻害作用をもつ大量ガンマグロブリン投与を行なうことで検討する。さらにFcRn以外で抗体の血管からの組織移行を規定する分子メカニズムの詳細についても今後検討していく予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Perivascular leukocyte clusters are essential for efficient activation of effector T cells in the skin.2014
Author(s)
Natsuaki Y, Egawa G, Nakamizo S, Ono S, Hanakawa S, Okada T, Kusuba N, Otsuka A, Kitoh A, Honda T, Nakajima S, Tsuchiya S, Sugimoto Y, Ishii KJ, Tsutsui H, Yagita H, Iwakura Y, Kubo M, Ng Lg, Hashimoto T, Fuentes J, Guttman-Yassky E, Miyachi Y, Kabashima K.
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Journal Title
Nature Immunology
Volume: 15
Pages: 1064-1069
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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