2014 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア膜間のリン脂質輸送機構の構造生物学的解明
Project/Area Number |
14J03504
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
渡邊 康紀 京都産業大学, 総合生命科学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 脂質輸送タンパク質 / 結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの正常な機能の維持には,ミトコンドリア膜のリン脂質組成が適切に保たれることが重要である.出芽酵母において,Ups1-Mdm35複合体はミトコンドリア特異的リン脂質であるカルジオリピンの維持に重要であり,膜間部においてカルジオリピン合成の前駆体リン脂質であるホスファチジン酸(PA)の輸送能が指摘されているが,PA輸送の詳細なメカニズムは不明である.本研究ではMdm35単体,Ups1-Mdm35複合体のアポ型及びPA結合型の結晶構造を各々決定した.Ups1はSTARTドメインを持つリン脂質輸送タンパク質とよく似たフォールドをとっていた.Mdm35は3本のαヘリックスから成り,Ups1の形に沿って結合していた.Ups1は塩基性残基と疎水性残基から成る深いポケットを持ち,ポケットの入り口は自身のΩループによって塞がれていた.PAはリン酸頭部をポケット奥の塩基性残基に向けた配向で結合していた.リポソームを用いた解析から,Ωループ及びポケット内の塩基性残基は生体膜への結合に必須ではないが,PAを生体膜から引き抜く活性に必要であることが明らかになった. Ups1は膜へ結合する際,Mdm35の解離を伴うことが知られているが,Ups1とMdm35をジスルフィド結合で架橋することでMdm35が解離できない形にしたところ,生体膜への結合能及びPAの輸送活性が低下した.したがって,Mdm35の解離を伴ったUps1の膜への結合は,PAの効率的な輸送に重要であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアの外膜から内膜にホスファチジン酸(PA)を特異的に輸送すると考えられているUps1とその機能補助因子Mdm35について,大腸菌で組換え体を発現精製し,結晶構造を決定した。Mdm35単独についても結晶構造を決定した。さらにUps1-Mdm35複合体にPAが結合した三者複合体についても結晶構造を決定した。Ups1 には深い脂質結合ポケットがあり,塩基性アミノ酸に富んだポケットの奥に負に帯電したPA の頭部を向ける形で,PAが結合していた。さらに構造に基づく変異体を用いたIn vitro の脂質輸送アッセイから,ポケットの塩基性アミノ酸,ポケットの蓋をする形のΩループの重要性が明らかになった。またUps1 の類似タンパク質であるUps2についても構造機能解析を進めている。これらの結果を論文として投稿した。以上のように,当初の計画以上に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
出芽酵母において,Ups1のホモログであるUps2はMdm35と複合体を形成し,ミトコンドリア内のホスファチジルエタノールアミン(PE)の維持に必要であることから,Ups2もリン脂質の輸送に関与する可能性がある.そこで,Ups2によるリン脂質輸送機構を解明するためUps2-Mdm35複合体の構造機能解析についても取り組む.Ups1の場合と異なりUps2はMdm35と共発現させても可溶性に発現させることは出来なかった.そこで,決定したUps1-Mdm35複合体の立体構造に基づいてUps2とMdm35を一本鎖に繋いだコンストラクトを作製したところ,良好な可溶性発現に成功した.今後はこのコンストラクトを用いて機能解析及び結晶構造解析を目指す.
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Research Products
(4 results)