2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03547
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Research Institution | The Toyo Bunko |
Principal Investigator |
阿部 由美子 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 中国近代史 / 満洲族 / 旗人 / 民族 / 清朝 / 中華民国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国近代史における旗人から満洲族誕生の過程を解明することを目的としており、その目的のために20世紀における満洲族の社会構造の変化とアイデンティティの形成について分析している。資料としては、主に清朝末期から中華民国北京政府、南京国民政府、満洲国の各時期の新聞資料の旗人・満洲族に関する報道や彼ら自身の投稿などを使用している。なかでも北京の庶民が購読していた白話報『京話日報』、『群強報』、『愛国白話報』などには清室や旗人に関する記事が多い。また日本人経営の保守系漢語新聞『順天時報』にも清室、旗人の記事が豊富である。27年度は前年度に引き続きこれらの北京の新聞資料の分析を行い、さらに北京における資料調査で、『北京女報』や『大同白話報』など新たな資料を収集することができた。さらに、瀋陽地区の旗人・満洲族について分析するため、『盛京時報』の調査も行った。また、若手研究者を中心に組織された研究会「『順天時報』の会」に参加し、北京のメディアや言論空間に対する知見を広げることができた。 本年度の研究成果としては、1928年の北伐以降の北京の資料調査から1930年代の満洲族社会について新たな発見をすることができた。1928年の北伐以降は、満洲族の回想録などの資料によると、北京では排満の風潮が一段と強まり、満洲族であることを表明しづらい雰囲気が醸成されていたというが、1928年以降の新聞資料では確かに満洲族に対する否定的な表現が増加しており、回想資料を裏付けることができた。五族共和が謳われていた北京政府時期と、中華民族主義による同化主義をとる国民政府時期の違いや、それが満洲族のアイデンティティ形成や民族表象の変化に与えた影響を今後も調査していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では多角的、マクロ的視点から中国近代史における満洲族社会の実態と旗人から満洲族誕生の過程を解明することを目的とし、北京及び満洲地域の清朝末期から中華民国北京政府時期、南京国民政府時期、満洲国時期の旗人・満洲族に関する資料調査を行っている。27年度は日本及び中国での資料調査はおおむね順調に進んでおり、調査範囲も1928年以降、1930年代にまで拡大することができた。 1928年以降は中華民国北京政府から南京国民政府へと政権が交代し、満洲族を取り巻く政治的、社会的環境も大きな変化に直面していた。八旗が完全に解体し、北京政府時期の五族の一つとしての地位も喪失した満洲族にとっては、国民政府時期は生存のための模索の時代でもあったが、この時代の資料調査から従来知られていなかった満洲族社会の実態を探ることができる資料を得ることができた。28年度も引き続きこれらの資料収集と分析を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は採用最終年度であるため、26年度、27年度の研究成果を引き継ぎつつ、広域的、多角的、跨時代的な近代満洲族史を完成させることを目指す。これまで収集してきた資料の精査、分析を進め、清末から中華民国北京政府、中華民国南京国民政府、満洲国の各時代の満洲族の政治的、社会的な環境について整理し、さらに中華人民共和国時期までを視野に入れつつ、中国近代史における満洲族を位置づけしなおす作業を行う。各時代の満洲族を取り巻く政治的、社会的状況の変化と、それに対応しつつ生き残りを模索した彼らのアイデンティティ変遷や自己認識の形成を明らかにすることによって、旗人から満洲族誕生の過程を解明するという本研究課題を完成させる。 また、前年度に引き続き、中国、台湾において資料収集を行う。
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Research Products
(4 results)