2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会における防災対策の共同構築-防災教育と避難訓練の充実化を目指した研究
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14J03596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
孫 英英 京都大学, 防災研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | アクションリサーチ / 地域研究 / 防災心理学 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、南海トラフの巨大地震・津波に関する新想定に基づき、避難者である地域住民の視点から津波避難の課題を検証し、「個別避難訓練タイムトライアル」という手法を用いて、個別具体的に改善策を提示した。これら活動の成果を博士学位論文としてまとめるとともに、学術論文として投稿し、心理学分野の学術会議においても研究発表を行った。 内閣府による南海トラフの巨大地震・津波の新想定が発表されてから、地域で暮らしている住民は将来の防災対策に対して必ずしも前向きとは言えないムードに陥っている。住民側に見られたネガティブな反応とその解決策について、二度の学会報告に基づき、「Single-person Drill for Tsunami Evacuation and Disaster Education」という論文を発表した。また、「Significance of Case Studies in Tsunami Risk Reduction」という口頭発表においては、社会実践を見るときの方向性を、「平均化」と「極限化」、「第三者」と「当事者」がともに重要であることを提示した。 地域社会における防災対策の共同構築を中心に、地元の学校、住民、自治体など、多様な関係者によって推進されている津波減災の実践について、その構図とプロセスを記述し分析するとともに、今後について展望したアクションリサーチの成果を、博士学位論文「Action Research to Promote Tsunami Risk Reduction: Ethnographic Approaches to Disaster Education and Tsunami Evacuation」として整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は、特別研究員として採用されて以来、研究計画にそって日々たゆまなく研究活動を行ってきている。特に、研究フィールドである高知県四万十町興津地区において、南海トラフによる巨大地震・津波の被害を軽減するための手法である「個別避難訓練タイムトライアル」の推進に大きく力を入れている。その成果は、「動画避難カルテ」と呼ばれる映像の成果物として集約され、学会でもマスメディアでも高い評価を受けている。かつ当該成果物を活用した現場へのフィードバックも積極的に実施している。さらに、昼間と夜間の避難行動を比較可能な「動画避難カルテ」も作成した。これらの活動成果を踏まえ、博士学位論文「Action Research to Promote Tsunami Risk Reduction: Ethnographic Approaches to Disaster Education and Tsunami Evacuation」を完成し、計画通りに学位号を取得した。そして、研究の実践の成果を、日本国内だけでなく、国際学術誌に掲載された論文等を通じて海外に対しても積極的に発信している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果にもとづき、私は研究フィールドである高知県四万十町興津地区において、「個別避難訓練タイムトライアル」と呼ばれる実践を当初の計画通りに行う予定である。ただし、研究の進展に伴い、津波避難訓練の促進および訓練参加者の行動と意識の解明が必要になっているため、新しいツールの開発を意欲的に行いたい。 具体的には、津波専門家やCG専門家と協力し、「個別避難訓練タイムトライアル」の特徴を最大限に活かした、スマートフォン・アプリの開発を進めていきたい。このアプリの導入に伴い、興津地区の住民を対象に、包括的に津波避難訓練を実施するほか、他地域への発信を通じ、当該アプリの発展的転用の実践をねらう。 これらの実践の結果にもとづき、地域社会の津波防災実践の変革を目指す「個別避難訓練タイムトライアル」における関係者のアイデンティティの変容、および「学習」のプロセスを分析し、より良い取り組みへとつなげる。つまり、一人ひとりが主体となって防災実践に関与していくプロセスにおいて、どのようなアイデンティティの変容が生じたかを、理論的に解明していきたい。さらに、「個別避難訓練タイムトライアル」をローカルからインターローカルな活動へと発展し、理論的立場から分析を行い、南海トラフの巨大地震・津波リスクに直面する多くの地域社会の取り組みに研究成果を還元する。
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Research Products
(7 results)