2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J03600
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾沼 広基 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 自然災害 / 適応 / 人的被害 / 被災経験 / パネルデータ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今後の気候変動や発展途上国の開発の進展を踏まえ,自然災害への適応(自然災害の被害をいかに減少させるか)が国際的な課題となっている.本研究は計量経済学の手法を用いて過去の被害と現在の被害の関係性を見ることで適応の可能性について検証している.分析に使用したデータは159ヶ国の1990年から2010年の不完備パネルデータである.過去の被害データは“自国の被害”と“他国の被害”に分けて作成し,それぞれの影響を見ている.ここで,他国の被害データに関しては,“大陸別(アジア・アフリカ・オセアニア・ヨーロッパ・アメリカ)”と“自国以外の世界各国”の2種類を定義した.また,災害の種類ごとによる特徴の違いを比較・考慮するため,自然災害だけでなく技術的災害も加えて分析を行っている.具体的には,自然災害9種(洪水,台風,寒波・熱波,感染症,地震,地滑り,干ばつ,林野火災,噴火)と技術的災害3種(産業事故,輸送事故,崩壊事故)である. 分析の結果より,自然災害と技術的災害の全12種において自国の過去の被害が大きいほど現在の被害を減少させていることが示された.一方で,他国の過去の被害と自国の現在の被害の関係性については自然災害と技術的災害で異なる結果となった.自然災害では他国で大きい被害があるほど自国の被害が減少している.しかし,技術的災害では統計的に有意な関係性は見られなかった.この結果から,自然災害による被害が国を超えて影響を持つのに対して,技術的災害による被害は国内での影響にとどまると考えられる. 今後の適応を効果的に考えていく上で,災害の特徴を考慮しながら議論を進めていくことが重要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
被災経験のデータ作成にあたり少し時間がかかってしまったものの,一つの研究としてまとめるだけの分析結果を示すことができた.しかしながら論文として仕上げるまでには至らなかった点は当初の予定以上とはならなかった点である.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に行った実証分析の結果を踏まえて,将来予測や被害軽減度合いの推定を行う. また,アジアやアフリカの災害に脆弱な地域について現地視察に行くことで,防災対策の現状や文化・地域性などについての現状を把握する. そこで得た知見をもとにさらに論文を進めていく. そして,研究成果を国際学術誌に投稿するとともに博士論文としてまとめる.
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Research Products
(4 results)