2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04281
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
髙松 周平 新潟大学, 自然科学系, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 重い電子系化合物 / カイラル超伝導 / ネマティック秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
URu2Si2では、隠れた秩序と呼ばれる謎の秩序状態が出現する。近年の磁気トルクの実験により、その正体が系の四回回転対称性を破るネマティック秩序であることが示唆されているが、その実験結果を否定する実験も報告されており、未だ決着がついていない。また、この物質では、カイラル超伝導体であることが、磁場中比熱の測定等から判明している。超伝導秩序は他の秩序との共存による影響を強く受ける。そのため、クーパー対の内部自由度に起因して四回回転対称性がある場合とは異なる新奇な超伝導状態や渦糸格子が安定になることが期待される。 本研究では、URu2Si2における新奇超伝導状態の発見、解明を目的として、(1)ネマティック秩序と共存するカイラル超伝導の研究、(2)URu2Si2における磁場中超伝導状態の解析を行った。研究(1)では、URu2Si2やSr2RuO4などのカイラル超伝導体を扱うことができる模型を構成し、c軸磁場中での磁場温度相図と渦糸格子構造を決定した。その結果、ネマティック秩序との共存により転移温度付近で非カイラル相からカイラル相へのクロスオーバーが生じ、そのクロスオーバーが、渦糸格子構造の変化に伴う相転移を引き起こすことが分かった。 研究(2)では、バンド計算の結果に基づき、URu2Si2の電子状態を精密に取り入れた模型を導出し、磁場温度相図と渦糸格子構造を決定した。この研究によって、URu2Si2においてネマティック秩序がカイラル超伝導状態に与える影響は、相図、渦糸格子に明確に現れることを理論的に予言し、中性子小角散乱の実験によって渦糸格子構造を調べれば、隠れた秩序の正体を明らかにすることができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネマティック秩序とカイラル超伝導秩序の関係を明らかにし、新奇な超伝導相を発見した。さらに、微視的に導出した模型に基づく解析によって、URu2Si2における隠れた秩序の正体を解明する実験を提案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、スピン三重項超伝導体であるUPt3における多重超伝導相図の研究を行う。具体的には、弱いスピン軌道相互作用を考慮した6成分ギンツブルグランダウ模型を構成し、ランダウ準位展開と変分法を用いて磁場温度相図を決定する。
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Research Products
(4 results)