2014 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉ダイバータ高性能化のための高エネルギー粒子束とプラズマとの相互作用解明
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14J04331
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
髙橋 宏幸 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ダイバータ / ヘリウム / 体積再結合 / 高エネルギーイオン / 荷電交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はダイバータプラズマ模擬装置DT-ALPHAにおいて生成したヘリウム体積再結合プラズマに対して高エネルギーヘリウムイオンビーム重畳実験を行うことにより、高エネルギーイオン流存在下の体積再結合過程の挙動を解明することである。前述の目的に対して、本年度は(1)ターゲットプラズマの空間分布計測、および(2)初期的なビーム入射実験を行った。(1)では静電プローブ法と受動分光法を併用し、円柱プラズマ中心部で体積再結合が進展するプラズマが得られたことを確認した。(2)では、干渉フィルタと光電子増倍管を用いた分光計測によりイオンビームの流入に伴いプラズマの発光が減少することを確認した。この発光量の減少に関しては高エネルギーイオンと基底状態ヘリウム原子との荷電交換に起因することが示唆されている。即ち、再結合プラズマ中であっても電離進行過程により励起状態原子の占有密度が影響を受けること、ならびにプラズマ発光の変化量は僅かではあるものの内部の基底状態原子の分布が大きく影響を受けることが示唆された。また、体積再結合によって生成された高励起状態原子からの発光を高エネルギーイオンビームの有無で比較を行った。これにより高励起状態原子の発光がイオンビームの流入により減少し、かつその減少割合が主量子数に依存することを示唆する結果を得た。この結果に対しては荷電交換反応時定数と励起原子の自然放出遷移確率との比較を行い、励起状態原子の荷電交換が重要となることを示唆した。即ち、高エネルギーイオンがもたらす荷電交換により、その系の体積再結合過程が緩和することが示唆されている。体積再結合プラズマと高エネルギーイオンとの相互作用については本研究で初めて調査が行われた内容であり基底状態原子・高励起状態原子ともに荷電交換が発現し得るというダイバータプラズマ研究にとって重要な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初における本年度の研究計画としては、(1)DT-ALPHA装置における再結合プラズマ特性の理解、(2)イオンビーム入射実験に向けた計測器整備、(3)再結合プラズマ中への高エネルギーイオンビーム重畳実験の3つの項目を予定していた。(1)に関しては静電プローブ法と受動分光法併用した空間分布計測を行うことにより概ね達成されている。この(1)を通して、プラズマの体積再結過程が円柱プラズマ中心部で進展していることが確かめられた。またこのようなプラズマを再現性よく生成するための条件として、電子とイオンの温度緩和時間に着目した議論を行った。その結果、DT-ALPHA装置においてビーム入射実験を行う際のターゲットプラズマ生成条件の同定が達成された。 このように(1)に関しては当初の予定を上回る成果が得られたものと考えられる。(3)に関してはビーム重畳実験に着手し体積再結合により生成した高励起状態のヘリウム原子が高エネルギーヘリウムイオンと荷電交換反応を経験することを指摘する結果を得た。加えて、イオン流束の小さな領域では高励起状態の原子ではなく、基底状態原子の荷電交換の影響が大きくなることを示唆する結果を得ている。このように(3)の項目に対しても当初の目的がおおよそ達成されている。ところが、(2)に関しては体積再結合プラズマを時間分解能良く計測できる計測器の整備が十分に進んでいない。その理由としては、(1)および(3)で得られた実験結果の理解は進んでいるものの、そこに本年度の多くの時間を要しており時間分解能良く体積再結合プラズマの計測が可能な計測手法の選定が進んでいないためである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の項で記述したように、本年度の研究によって体積再結合過程により生成された高励起状態のヘリウム原子は系内に流入した高エネルギーイオンと荷電交換を経験することが示唆されている。加えて、荷電交換反応時定数と励起状態原子の自然放出遷移確率との比は、実験的に観測された発光強度の減少割合と同様の傾向が見られる。そこで今後は計測領域に到達するイオンビーム流束もしくは体積再結合イベント数を制御した実験を行うことにより、プラズマ中の体積再結合過程に対して高エネルギーイオンがもたらす影響をより深く理解することを目指す。また、高励起状態原子が荷電交換により系外に排出されると、ターゲットプラズマ領域下流には高励起状態原子の発光が計測されると考えられる。従って、ターゲットプラズマの生成領域を変更した実験を行い、高励起状態原子からの発光の空間分布を取得する実験を目指す。
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Research Products
(4 results)