2014 Fiscal Year Annual Research Report
グラフに付随するトーリックイデアルとグレブナー基底の研究
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14J04365
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
柴田 和樹 立教大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | トーリックイデアル / グレブナー基底 / 強Koszul |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は「切断イデアルのグレブナー基底とそれに対応するトーリック環の強Koszul性」について研究を行ってきた。切断イデアルはグラフのcutに対応するトーリックイデアルのことであり、切断イデアル、および、それに対応するトーリック環は、代数統計学を背景としてよく研究されており、トーリック環の環論的性質や、トーリックイデアルの生成系の元の最大次数等について、多くの結果が知られている。切断イデアルについて、「2次の二項式で生成されることと、グラフが4次の完全グラフをminorに持たないことは同値である」ことが知られている。しかし、4次の完全グラフをminorにもたない場合に、いつ2次のグレブナー基底をもつかはほとんど知られていない。非自明なグレブナー基底を構成した例としては、ring graphについて2次のグレブナー基底を構成した結果しか知られていない。そこで、上記以外のグラフにおいても切断イデアルが2次のグレブナー基底をもつかどうか計算実験を行い調べた。 その結果、「グラフが4次の完全グラフ、および、長さ5のサイクルをminorに持たないならば、切断イデアルは2次のグレブナー基底をもつ」ことを示し、切断イデアルが2次のグレブナー基底をもつための十分条件をグラフのminorの言葉で表すことに成功した。更に、「切断イデアルに対応するトーリック環が強Koszulであることと、グラフが4次の完全グラフ、および、長さ5以上のサイクルをminorにもたないことは同値である」ことも示し、切断イデアルに対応するトーリック環が強Koszulとなるための必要十分条件をグラフのminorの言葉で明確に示すとともに、非自明な強Koszulトーリック環(多項式環のSegre積やテンソル積で構成することができないトーリック環)の無限系列を理論的に構成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度研究計画で挙げた「切断イデアルのグレブナー基底の構成」について、切断イデアルが2次のグレブナー基底をもつための十分条件をグラフのminorの言葉で表した。これは一般の4次の完全グラフをminorにもたないグラフに拡張できるかどうか、興味深い結果となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果をもとに、より一般的な理論の構築を目指し、トーリックイデアルのグレブナー基底の構成、および、トーリック環の環論的性質について研究を行う。具体的には 1.切断イデアルのグレブナー基底の構成、および、トーリック環の正規性 2.マトロイドに付随するトーリックイデアルの生成系の次数に関する予想 について研究する。 切断イデアルについて、2次のグレブナー基底をもつための必要十分条件をグラフの言葉で特徴づけていく。更には、切断イデアルのイニシャル単項式がいつスクエアフリーとなるかどうか計算実験を行い、切断イデアルに対応するトーリック環がいつ正規となるかどうか調べていく。 マトロイドについて、3-連結マトロイドに限定して、予想が成り立つのかどうか調べれば良いことが知られている。この3-連結マトロイドのトーリックイデアルのグレブナー基底を構成する方法を模索し、予想が成り立つのかどうか調べていく。
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