2014 Fiscal Year Annual Research Report
長石のルミネッセンスによる天体衝突過程の理解と太陽系形成史の解明
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14J04437
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
鹿山 雅裕 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | カソードルミネッセンス / 長石 / 衝撃変成作用 / 加圧実験 / 一段式火薬銃 / ダイアモンドアンビルセル / 天体衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝撃変成作用に応じて長石の発光特性が変化する現象の素過程を明らかにするべく、天体衝突を模擬した動的ならびに静的圧縮実験を各種長石に対して行い、回収試料のカソードルミネッセンス(CL)を測定した。 動的ならびに静的圧縮実験には一段式火薬銃ならびにダイアモンドアンビルセルをそれぞれ用い、10から40 GPaの加圧実験を長石鉱物であるカリウム成分に富むサニディン、マイクロクリン、ナトリウム成分に富むアルバイト、そしてカルシウム成分に富むアンデシンおよびアノーサイト単結晶に試みた。それぞれの加圧実験により得られた回収試料に対して電子顕微鏡を用いて微小領域の化学分析と組織観察を、カソードルミネッセンス分光分析装置により発光特性を、さらにX線回折分析ならびにラマン分光装置を用いて結晶相同定を行った。 動的圧縮実験からの回収試料はX線回折ならびにラマン分光分析から10および20 GPaの回収試料は全ての長石において結晶構造を保持し、30 GPa以上ではガラスに転移することが判明した。一方、静的圧縮実験では25 GPa付近までは結晶構造を有するものの、それ以上の圧力ではガラス相となる。各試料のCL測定から、加圧した圧力の増加に伴い紫外から青色領域の発光強度が高くなり、特に圧力によりガラス化した試料では紫外~青色発光の増光は著しい。この紫外から青色領域のCL発光は長石のSi成分に依存することから、SiO4四面体の歪および結合の破断による欠陥が発光原因と示唆される。さらに波形分離解析からこの紫外~青色発光の発光強度を定量化することに成功し、圧力と発光強度は相関関係を有することが判明した。この検量線はSi成分および圧力保持時間(動的圧縮は10-6 s、静的圧縮は100 sオーダー)にも依存することが判明した。今後は隕石や衝突クレーター試料の長石と比較し、この検量線を用いた圧力推定の開発を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
動的および静的圧縮を再現する一段式火薬銃ならびにダイヤモンドアンビルセルを用いたそれぞれの加圧実験は試料準備と圧縮からの回収に時間がかかり、さらに高圧領域においては加圧制御の失敗や試料の紛失などのリスクが高いため非常に大きな労力を費やすことが予想されていた。しかし、動的圧縮実験については圧力制御を向上するべく高い圧力については飛翔体にSUS304ではなく、より密度の高いタングステンを用いることにより少量の火薬や衝突速度の低い条件でも安定して高圧を発生することに成功した。さらに、ダイヤモンドアンビルセルを用いた静的圧縮実験については、回収実験の試料および加圧に伴うダイヤモンドへの負荷などをふまえてレーザーによりダイヤモンドの間に埋めるレニウムガスケットの径を350μmにし、圧媒体なしで粉末試料を封入して試みた。ガスケットの径から考えられる回収量は各種分析を行うことのできる最低限の量であり、さらにダイヤモンドへの負担は非常に少ない条件である。また、圧媒体を伴っていないため平衡ではないが、粉末試料であるため疑平衡条件であること、隕石や衝突クレーターの岩石と類似した鉱物の粒径、さらに歪効果が大きいなどというように実際の衝撃変成作用に近い条件を再現することができる。このような加圧実験の際の試料準備と実験条件を工夫することにより回収条件の改善と回収率の向上の成功に至った。このようなことからその後の回収試料のCL分析をスムーズに行うことができ、当初より研究計画を進展することに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
動的ならびに静的圧縮実験の回収試料から得られた結果をもとに、実際に隕石や衝突クレーターが被った天体衝突時の衝撃圧力の評価をCLを用いて試みる。火星隕石やドイツのリース・クレーターに産する角閃岩中のアルカリ長石についてはすでにCL測定を行っており、加圧実験により得られたCLスペクトルパターンと一致する。よって、加圧実験と実際の天体衝突による衝撃変成作用とは温度変化や歪の発生、そして圧力保持時間に大きな違いがあるものの、共通して圧力に依存して生成される構造欠陥が各長石ともに生じることが示唆される。このことから、隕石や衝突クレーターに産するアルカリ長石や斜長石、さらには衝突によりガラス化した長石であるマスケリナイトを対象にCLスペクトル測定をすることで衝突時の衝撃圧力を推定することができる。従って今後は各種隕石や衝突クレーターに産するインパクトの長石を対象としたCL測定から衝撃変成作用が長石の発光特性に及ぼす影響を明らかにする。 CL測定には、アルカリ長石や斜長石を主要な構成鉱物とする月隕石や火星隕石を選定し、さらに衝突クレーター試料としてリース・クレーターやチクシュルーブ・クレーター(メキシコ)、フレデフォード・クレーターのインパクタイトを対象とする。これらの試料はすでに一部購入しており、さらにクレーター試料については実際に採取している。これらの試料に含まれる長石を対象にCLスペクトルを取得し、得られたCLデータの波形分離解析から衝撃変成作用時の加圧現象により生じる構造欠陥の検出ならびに発光特性の定量評価を試みる。得られたデータを加圧実験により得られた発光強度と圧力との検量線をもとに隕石やクレーター試料が受けた圧力の評価ならびに温度や圧力保持時間との関係を精査することを目標とする。
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[Presentation] Formation process of maskelynite in meteorite analyzed by cathodoluminescence spectroscopy and microscopy2014
Author(s)
M. KAYAMA, H.NISHIDO, T. SEKINE, N. TOMIOKA, S. KANEKO, M. MIYAHARA, E. OHTANI, S. OZAWA, Y. KATOH, K. NINAGAWA
Organizer
The 21th General Meeting of the International Mineralogical Association
Place of Presentation
sandton convention centre, Johannesburg, South Africa
Year and Date
2014-09-01
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