2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゴーシェ病原因糖脂質を認識するレクチン受容体の発見とその病態への関与の解明
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14J04440
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 雅大 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Mincle / 糖脂質 / アジュバント |
Outline of Annual Research Achievements |
C型レクチンの1つであるMincle(Macrophage inducible C-type lectin)は、マラセチア真菌や結核菌由来糖脂質を認識することが明らかとなっている。また、Mincleは死細胞を認識することから、損傷に伴って生成される内因性糖脂質を認識する可能性も考えられるが、Mincleの内因性糖脂質リガンドは見つかっていなかった。 我々は、内因性糖脂質成分中にMincleのリガンドが含まれる事を発見した。加えてMincleは、効率良く獲得免疫を誘導するアジュバントレセプターであることから、『損傷細胞より放出される糖脂質が内因性アジュバントとして機能する』という新たなモデルを着想するに至った。一方、Mincleによって認識される内因性糖脂質の分解酵素機能欠失型ミスセンス変異は、ゴーシェ病の原因となることが知られている。全身性の炎症を伴う肝脾腫、神経障害等の症状が主に確認されているが、発症に至る分子機構は未だ不明である。 以上より我々は、Mincleはこの内因性糖脂質に対し、アジュバントレセプターとして作用する一方、異常蓄積した際には過剰な炎症を惹起する原因受容体として機能している可能性を考え、その生理的、病理的機能の解析を行うことを目的とした。 本年度は主に、同定した内因性糖脂質がアジュバント活性を有するかを明らかにするための実験を精力的に行った。その結果、当該糖脂質を用いた系において、in vitro、in vivoの両方で、当該糖脂質がMincleに認識されることでアジュバント活性を発揮し、獲得免疫誘導に働くことを明らかとなった。 今後は、代謝異常症モデルマウスの樹立を通し、Mincleの病理的機能解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、Mincleと内因性糖脂質リガンドの生理的機能(内因性アジュバントとしての機能)、病理的機能(ゴーシェ病病態との関連)の解析である。当初の予定通り、本年度は、当該糖脂質を用いた系において、in vitro、in vivoの両方で、当該糖脂質が受容体であるMincleに認識されることでアジュバント活性を発揮し、獲得免疫誘導に働くことを明らかとした。 In vitro解析は、樹状細胞とT細胞の共培養の系を用いた。抗原刺激に加えて、当該糖脂質で樹状細胞を活性化すると、効率的にT細胞応答を誘導することが明らかとなった。In vivo解析では、DTHの系を用い、当該糖脂質が、Mincleの強力なリガンドとして知られるTrehalose 6,6’-dimycolate (TDM)と同程度の応答を示すことを明らかとした。また、当該糖脂質が蓄積する(マウス由来細胞で血球系を再構築した)マウスでは、外からアジュバントを加えること無く抗原のみで抗体産生が誘導されたことから、この糖脂質が内因性アジュバントとして働いている可能性を強く示唆した。よって、予定していた当該糖脂質のアジュバント活性を、in vitro、in vivoの両方から解析できた為、本年度の研究計画は概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Mincle内在性糖脂質リガンドが生体内に蓄積する病態モデルを作成し、その病態形成におけるMincleの寄与を検討する予定である。当該糖脂質の分解を担う酵素を欠損することで、この糖脂質が蓄積するマウスを作成可能ではあるが、このマウスは出生後24時間以内に死亡する為、以下の方法によって病態モデル作成を試みている段階である。 1, Tet offシステムによって、当該糖脂質の分解を担う酵素を、成長後に欠失させ得るtTA-Tgマウスを作成する。 2, Cre-loxPシステムによって、当該糖脂質の分解を担う酵素を、組織特異的に欠失させ得るマウスを作成する。 これらのマウスとMincle欠損マウスを交配させ、それぞれの病態の変化を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)