2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04457
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 和貴 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 光触媒 / 結晶化ガラス / ナノ構造体 / 化学エッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度において得られた成果は以下の三点である。 第一に,本研究において作製したガラスに関し結晶化挙動を調査した結果,ガラス組成や熱処理条件を変化させることで,熱処理後に析出するTiO2の結晶構造を変化させることが可能であることが判明した。特に組成Aにおいて光触媒として有利な結晶であるAnatase型のTiO2をほぼ単相で析出させることに成功した。ガラスを構成する元素のうちSiは同時に結晶化ガラスの化学的耐久性を変化させる効果を有しており,前述したAnatase単相析出が実現可能な組成Aは化学エッチングに適した化学的耐久性を同時に満たす組成であることが分かった。このように,ガラス組成や熱処理条件によって簡便に異なる結晶化挙動を示す性質は材料応用を考える上で重要なものと言える。 第二に,作製したTiO2結晶化ガラス全てにおいて化学エッチングによる光触媒活性の向上を観測することに成功した。活性評価を行った試料の中にはエッチング前には光触媒活性を示さなかった試料が複数存在したが,それら試料においてもエッチングを施すことにより活性の観測が確認された。エッチング前後における活性変化に関して,最も大きな変化倍率は16倍であった。この結果により,TiO2結晶化ガラスだけではなく他の光触媒結晶化ガラスにおいても化学エッチングによる触媒活性の向上が期待された。 第三に,最も高い光触媒活性を有した試料が既存材料以上の活性を有していることを示唆した。本研究で作製したTiO2結晶化ガラスと既存の粉末TiO2多結晶体と単位面積あたりにおける触媒活性を比較した結果,結晶化ガラスが4倍高い活性を有している可能性が示された。母材がガラスであるため,容易に大型化が可能となり大規模な水素生成プラントなどへの応用が期待される。これは従来の粉末光触媒では実現が不可能であった応用例であり,今後結晶化ガラスが光触媒材料として重要な材料となると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では(1)試料組成の検討,(2)組成およびエッチングによる光触媒活性への影響調査,(3)表面結晶化に適したガラス組成の探索であった。 (1)に関してはこれまでの研究結果をもとにし調査を行った結果,光触媒結晶として有利な材料であるAnatase型のTiO2が単相で析出し,かつ化学エッチング処理で適当な重量損失が発生するガラス組成および熱処理条件を決定することに成功した。 (2)に関しては異なる結晶化挙動を示すTiO2結晶化ガラス全てにおいて,エッチングによって光触媒活性が向上したことを確認した。これら試料の表面顕微鏡観察では無数のナノ粒子や凹凸が観察でき,比表面積の向上が予測されこのことが光触媒活性上昇の主たる要因であると結論付けられた。 (3)に関してはこれまでに作製したガラス組成では表面結晶化は確認されていない。ガラスの表面結晶化には不明な点が多くどのような組成,熱処理条件下で表面結晶化が発生するかは詳細な探索を必要とする。本研究で作製したガラスは主となる組成を1つ定め,それに対し元素添加等を行うことにより各物性評価を行っているため,元の組成を変化させることで表面結晶化を実現する可能性はあり検討の余地はまだあると言える。以上のように,本研究では年度計画3つの内2つを十分に達成したと考えており,達成度はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において,光触媒結晶化ガラスの作製に成功し,かつ化学エッチングによる光触媒活性の16倍の向上を実現した。さらに,既存材料との比較を行い,本研究で作製した材料が既存材料よりも優れた活性を有している可能性を示した。しかしながら,エッチングにより何故触媒活性が向上したのかに関する詳細な理由は明確になっていない。これまでの研究ではエッチングでの比表面積の向上による触媒反応の活性点増加の他にも,結晶化ガラス表面に存在するTiO2の割合増加,ナノ構造誘起による光散乱が触媒活性の上昇に繋がっていることを示唆したがこれら要因を考慮しても16倍の活性上昇を説明することはできていない。よって,今後の研究において最も重要な点は光触媒活性向上の原因を解明することにあると考えている。具体的にはエッチングによる比表面積変化,試料表面に存在するTiO2分布の観測や光吸収特性の変化を詳細に調査することが必要である。これらの調査を行うことによって化学エッチングの効果を明確にする。これに加え,新たに欠陥導入による活性変化に関して調査を行う方針である。光触媒材料に対する欠陥導入はバンド構造変化をもたらし,触媒活性の向上が見込まれる。そのため,これまでの化学エッチングに加え,欠陥導入による活性向上が実現できればより高活性なバルク光触媒材料の開発ができると考えている。一方で,表面結晶化に関しては組成および熱処理条件の探索を緻密に行う必要性があるため,短期間では実現が難しいと考えられる。光触媒反応は表面反応であるため,表面のみを結晶化させた材料の探索は重要ではあるものの現段階ではこれまでに作製した試料を用いて基礎的な物性測定を行うことがより重要であると考える。
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Research Products
(4 results)