2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規内皮細胞特異的遺伝子Sema3Gを用いた動脈硬化抑制効果の検討
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14J04473
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北本 匠 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | Semaphorin3G / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化病変の形成には、マクロファージがその中心的な役割を担っている。2015年度は、セマフォリン3G(Sema3G)のマクロファージ血管内皮細胞への遊走能に与える影響を検証するため、in vitro実験を進めた。 2014年度末より生成を試みていたSema3Gのリコンビナント蛋白が完成したため、これを用いて、Sema3Gの機能を検証した。マウス腹水由来マクロファージであるRaw264.7細胞とヒト単球のcell lineであるTHP-1細胞を用いて、Sema3Gがマクロファージの遊走能、接着能、増殖に与える影響を評価した。またヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて、Sema3Gが単球の走化性因子であるMCP-1の発現制御に与える影響を評価した。 マクロファージ自体には、Sema3Gの発現は見られなかったが、その受容体であるNuropilin1, 2やPlexinA1, B1, B2, D1, VEGFR1, 2, 3が発現している事をRT-PCRにより確認した。続いて、Sema3Gリコンビナントを用いたin vitro実験を行った所、Sema3Gはマクロファージの遊走能には影響を与えないが、Sema3G添加によりTHP-1細胞とHUVEC細胞の接着が阻害される傾向がみられた。さらに、Sema3G添加によりHUVEC細胞における白血球遊走刺激因子であるMCP-1の発現が有意に抑制され、RAW264.7細胞の増殖が抑制される傾向が確認された。以上の結果から、内皮細胞から分泌されるSema3Gはマクロファージのみならず、オートクラインで内皮細胞にも作用を及ぼし、局所におけるマクロファージの細胞増殖抑制効果と、活性化した血管内皮細胞への接着を抑制する効果を持つと考えられた。これらの作用を通じて、Sema3Gは、動脈硬化抑制作用を持つ可能性がある事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分泌型のセマフォリンであり、かつ血管内皮細胞に特異的に発現しているセマフォリン3G (Sema3G)に着目し、粥状動脈硬化形成における役割を解析してきた。前年度明らかにした事は以下の2点であった。①動脈硬化惹起因子である肥満、高血糖の条件下では、大動脈におけるSema3GのmRNAの発現が低下している②ApoEノックアウトマウス(ApoEKO)に比較し、Sema3GとApoEのダブルノックアウトマウス(DKO)では、動脈硬化性病変が増大した。 以上の結果は肥満、高血糖条件など動脈硬化を促進する状態では動脈硬化抑制に働くSema3Gが低下し、その結果として、動脈硬化性病変が増大する可能性を示唆している。今年度は、これらのメカニズムを解明する事を目的として実験を進めた。血管内皮細胞、マクロファージに対してSema3Gが与える影響をin vitro実験により評価した所、Sema3Gはマクロファージ、血管内皮細胞、炎症性蛋白に対する影響といずれにも動脈硬化抑制的に影響を与えるという一定の結果が得られた。続いて、論文化に必要な実験を計画、遂行している。おおむね、予定通りの進捗状況であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroで明らかにしたSema3Gの動脈硬化抑制作用を、再度in vivoにおいて検証する目的で、adenovirusベクターを用いてマウス体内でSema3Gを過剰発現させ、動脈硬化病変抑制効果がみられるか実験を進めている。 さらに、近年動脈硬化形成には血管新生に加えて、リンパ管の役割が注目されている。そこで、本研究で検討してきた検体を用いて、リンパ管内皮細胞の特異的抗体であるLyve-1抗体で染色を行った所、まだプレリミナリーな結果ではあるが、ApoE KOに比較し、DKOではLyve1抗体陽性細胞数が減少している可能性があった。今後は、この結果について、定量的評価を急ぐとともに、Lymphatic endothelial cell (LEC細胞)を用いたin vitro実験を同時に進めていく予定である。 Sema3Gの動脈硬化抑制効果及び、そのメカニズムについて、マクロファージ、血管新生、リンパ管新生という観点からまとめ、最終年度に論文化を目指したいと考えている。
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Research Products
(5 results)