2015 Fiscal Year Annual Research Report
複雑動作課題とミラームーブメント -課題遂行時に反対側が無意識に動くのはなぜか-
Project/Area Number |
14J04478
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
守下 卓也 広島大学, 総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ミラームーブメント / ミラーアクティビティー / 経頭蓋磁気刺激法 / 半球間抑制 / 両手運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
片側の運動,特に上肢の手指筋を使用した運動時に,対側の同名筋に不随意運動が観察されることが知られている.この不随意運動はミラームーブメント(Mirror movement: MM),ミラーアクティビティー(Mirror activity),オーバーフロー等と呼ばれ,多くの研究が観察している現象である.本研究の目的は,1) MMの発生機序について,2) MMの役割・意味するものについて主に健常成人を対象として研究を行う事を目的としている. まず前年度H26年度に終了したMMの発生機序に関する研究を高齢者にまで対象を拡げた.経頭蓋磁気刺激法を用いて観察できる脳梁を介した左右の運動野間の抑制機能である半球間抑制とMMが若年者では深く関係していたが,高齢者ではこの関係が観られないことが示された.電気生理学的指標である半球間抑制の安静時と随意運動時の変化が高齢者では観察されないことからも,半球間抑制が正常に機能していないことが示唆され,半球間抑制とMMの結果を支持する形となった.現在これらの結果をまとめて国際誌に投稿中である. また上記のMMの発生機序に関する研究と並行して,両手運動とMMの関係を探る研究も行った.今回行った非対称な複雑な両手運動とMMの関係は観られなかったが,半球間抑制との関係は観られた.この結果は今後結果をまとめ国際誌に投稿する予定である.今後両手運動とMMの関係に関する研究は,両手運動の複雑さ等を考慮し,引き続き継続して行っていく予定であり現在も進行中である.これまでの結果からMMの発生するタイミングが個人で異なることが示された為,昨年度から計画していた学習との関連を観る実験を行う前に,現在はこのMMのタイミングの個人差を説明する要因を探る実験を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の実績報告で報告したように,実験に使用する課題の変更はあったもののその後研究は以下の理由からおおむね順調に進行していると考える. まず若年者と高齢者の2つのグループで実験を行い,結果をまとめ国際誌に投稿中である,また仮説を支持する形とはならなかったが両手運動との関係を探る研究も行ったことは達成度の度合いとしては高く評価できるものであると考える.将来両手運動のデータも結果をまとめ国際誌に投稿する予定である.次の実験も既に進行中であり,良いペースで研究が進行していると自身で評価している.
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Strategy for Future Research Activity |
MMの実際の行動面に関する影響・役割について明らかにすることは多くの分野に重要な知見を提供することになると考える.昨年度はMMと学習との関係を探る計画を立てていた.しかしながら,研究を進める中でMMの発生するタイミングが個人で異なることを観察した.この個人差に生理学的な意味があると考え,学習の実験を行う前にこちらを検証することを既にH27年から開始した.H28年度からはこのMMのタイミングに関する研究を行い,その後に続く学習実験の土台作りを行っていく.
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