2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J04667
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
太田 亜由美 上智大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 光異性化反応 / 励起状態ダイナミクス / フォトクロミック分子 / 非断熱遷移 / ab initio計算 / MDシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究課題に「光機能分子に対する理論的総合研究」を掲げ、実験との比較だけでなく実験では見ることが出来なかった光機能ダイナミクスの理論化学の立場からの詳細な解明を目的としている。平成26年度には、以下の3つのテーマに取り組んだ。 (1)「気相および液相での1,3-シクロヘキサジエン/1,3,5-ヘキサトリエン間光異性化反応に対する理論的研究」 (2)「硫酸の光解離過程に関する理論的研究」 (3)「二酸化硫黄の液相中での光化学反応に関する理論的研究」 主たるテーマとして取り組んだ(1)では、すでに気相並びに液相の実験が報告されている1,3-シクロヘキサジエンと1,3,5-ヘキサトリエン間における光異性化反応に着目し、古典軌道ホップ法(TSH法)に基づく非断熱ab initio分子動力学計算による全自由度を考慮したシミュレーションを行った。本研究では非断熱遷移確率の計算に、Zhu-Nakamura公式を用いた。気相中を想定とした研究では、今まで報告されていた第1励起状態への励起のみならず、第2励起状態への励起も考慮した全自由度シミュレーションの結果から、非断熱遷移に関わる分子振動並びに励起先の違いにより生成比が変化することが新たに解明された。液相中のシミュレーション結果でも実験と定量的な一致が見られており、引き続き計算を行っている。現在これらの結果をまとめた論文を作成中である。テーマ(2)では、紫外領域における硫酸の光解離過程について非断熱ab initio分子動力学計算を用いたメカニズム解明を行い、新たに水素原子と硫酸水素への解離経路を示し論文発表を行った。テーマ(3)については二酸化硫黄の大気エアロゾル中での光反応の解明を目指すもので、実験の困難である当該系に対し理論的アプローチからの解明を目指すべく計算に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メインテーマであるシクロヘキサジエン、ヘキサトリエン間の光異性化反応の理論的研究では、今までに行われていなかった全自由度でのab initio分子動力学計算の結果から、気相中励起状態での詳細な分子構造変化や生成比を決定する要因の解明に成功し、現在論文を作成中である。一方、溶液中での本光異性化反応の計算結果の解析も進めている。 硫酸の光解離過程に関する理論的研究では、非断熱遷移を起こす波長帯を理論的に予想するためのシミュレーション、並びに解析を行い論文発表を行っている。以上の理由からおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在溶液中シクロヘキサジエン、ヘキサトリエン間光異性化反応の理論的研究では、新たに非断熱ab initio分子動力学計算とQM/MMモデルを組み合わせたプログラムを用いている。このプログラムを用いることで、溶媒効果を適切に取り入れつつも現実的な計算コストでの溶液計算が可能となった。さらに解析を進め、溶媒が系にどのような影響を与えているかを気相中での結果との比較や溶媒分子を変えてのシミュレーションから解明を行っていく。 また、これまでの研究に基づき、申請時の研究計画通り、結晶状態(固相中)の励起状態計算へのプログラム開発を行う予定である。まずは会合体内での励起状態の広がりが観測されているJ会合体をモデルに用い、先のQM/MMモデルを取り入れた非断熱ab initio分子動力学プログラムを基に固相用プログラム開発を行い、結晶内でのミクロな変化がマクロの大きな変化をもたらす過程についてシミュレーションでの再現を目指す。
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Research Products
(6 results)