2014 Fiscal Year Annual Research Report
生細胞膜における網羅的脂質ラベル化技術の開発と脂質プロファイリング
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14J04745
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安枝 裕貴 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 化学修飾 / ミトコンドリア / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアはATP産生や脂質代謝といった細胞機能の中核を担うオルガネラであり、ガンやパーキンソン病、といった重篤な疾患とも関連が深いことが知られています。そのため、ミトコンドリアに存在するタンパク質のプロテオミクスは、これら疾病のバイオマーカー探索やメカニズムの解明に大きく役立つと考えられます。現在、ミトコンドリアにおけるタンパク質の解析は、ミトコンドリアを生化学的に単離して行われています。しかし、この方法では他のオルガネラ成分の混入や、操作の煩雑さ、定量的な解析の難しさなどが大きな問題点として指摘されています。そこで私は新しいアプローチとして、ミトコンドリアに存在するタンパク質を選択的に化学標識し、プロテオミクスを行う技術の開発に着手しました。合成した化学標識化試薬群は生細胞において、速やかにミトコンドリアに集積し、タンパク質と共有結合的に反応します。反応したタンパク質を酵素消化によりペプチド断片化後、抗ローダミン抗体を用いた免疫沈降法によって標識化ペプチドを濃縮・精製し、LC-MS解析を行いました。その結果、合計約400種類のタンパク質の同定に成功しました。この中にはミトコンドリアでの存在に決定的な証拠の無かったタンパク質なども含まれており、詳細に解析することで、さらに未知のミトコンドリアタンパク質の同定につながることが期待できます。また、この方法は、標識化ペプチドをLC-MSで直接検出するため、試薬(小分子)が反応したアミノ酸残基を同定し、相互作用部位を明らかにすることも可能でした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学的にオルガネラのプロテオミクスを行う新規手法を開発し、実際に細胞分化や神経細胞の初代培養系に応用するなど、有用な手法であることを示すことができた。学会においても、講演賞を受賞するなど高い評価をうけており、一定の研究成果があげられたと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は神経細胞に薬剤を作用させた神経疾患モデル細胞でのバイオマーカーの探索などに応用して研究を発展させ、ミトコンドリアにおけるタンパク質発現の変化と疾病や生命現象の関連性の解明に取り組みたいと考えています。また並行して、DNA結合性の色素を用いて「核」をターゲットにも研究も進めており、これらオルガネラのプロテオームに化学の視点から迫ってみたいと考えています。
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Research Products
(2 results)