2014 Fiscal Year Annual Research Report
認知症高齢者を対象とする非言語行動に焦点を当てた自律対話システムの研究
Project/Area Number |
14J04848
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
桑村 海光 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | ロボット / ヒューマンロボットインタラクション / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、認知症高齢者が継続的に対話可能な自律的な話し相手ロボットの実現を目指している。今年度は認知症高齢者が遠隔操作型ロボット「テレノイド」を介した場合と直接対面時での対話サンプルを収集するためのシステム開発を行うとともに、京都と大阪にある高齢施設にて、それぞれ数ヶ月間に渡りフィールドワークを行った。また、なぜテレノイドが認知症高齢者の対話を活性化させるのかについて、補完によるモデルを提案した。 自然な状況での対話データの収集には、研究者が介在しない状況での収集が好ましい。また対象とする認知症高齢者の体調は、発熱や脱水症状などにより日々変化し、それによって対話内容も変わってくる。そのため、まず研究者が介在しなくとも、施設職員や傾聴ボランティアだけでも運用可能なシステムを開発するとともに、対話状況だけでなく対象者の状態も取得できるようなロボットシステムを開発した。 上記システムを用いて、11月からは、週1-2回のペースで対話データの収集を開始した。施設の入居者3名を対象として、ボランティアで施設を訪問している学生がテレノイドを介して対話した場合と、直接対面して対話した場合の記録を行っている。2年目の頭からは、学生の代わりに高齢者傾聴ボランティアがテレノイドを介して対話する場合と直接対面で対話する場合を記録する予定である。さらに、家族や親戚、遠方のボランティアなど、様々な人の対話データを取得するために、インターネットを介して離れた場所からでも対話・データ収集を行える遠隔対話システムの開発も行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、認知症高齢者が遠隔操作型ロボット「テレノイド」を介した場合と直接対面時での対話サンプルを収集するためのシステム開発を行うとともに、京都と大阪の高齢者施設にて、それぞれ数ヶ月間に渡りフィールドワークを行い、データの収集を行った。さらに、なぜテレノイドが認知症高齢者の対話を活性化させるのかについて、補完によるモデルを提案した。複数の国際学会で発表する成果をあげ、国際論文も受理され、研究はおおむね順調に進展していると思われる。しかし、モデル化した認知メカニズムは提唱したのみで、今後検証を行う必要がある。 また、高齢者発話の音声記録を自動認識することも試みたが、現状では遠隔操作者の声と高齢者の声とがオーバラップすることも多く、高齢者自身の声の不明瞭さと合わせて、自動認識はうまくいっていない。遠隔操作者側の声だけの記録も行っているため、これを利用してキャンセレーションを試みるとともに、当初計画のとおり、高齢者の音声に適応した認識機の開発も今後試みる。
|
Strategy for Future Research Activity |
遠隔操作者の声を用いて音声のキャンセレーションを行い、自動音声認識の精度を上げ、高齢者の音声に適応した認識着の開発を試みる。また、認知症高齢者との対話では、高齢者の過去の経験などに話題が集中することを利用し、発話コンテキストもそれぞれのターゲットが好む話題に限定することで、発話戦略の性能向上を図る。 さらに、フィールドワークで得られたデータを解析し、認知症高齢者が継続し、集中して対話を続けるために必要な言語、および非言語行動パターンの抽出を行う。抽出したパターンを部分的にロボットに実装し、その有効性を検証する。 最終的に実装したシステムのプロトタイプを定期的に施設内でターゲットの入居者に使用してもらい、対話システムを使用したときと使用しない時の入居者の反応や生活・行動パターンを比較する。特にBPSDが見られる入居者を中心として試行と行動分析を行い、生活行動の活性化やBPSDの抑制、介護士とのコミュニケーション頻度の増減などの観点から有効性の評価を行う。また認知症専門医や臨床心理士、介護士、高齢者家族とも結果について議論を行い、高齢者のQOL、介護負担の軽減や介護の質の向上という観点からの有効性に関しても評価を行う。
|