2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J04853
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
工藤 顕太 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | フランス思想史 / 言語 / 欲動 / ラカン / デリダ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、言語と欲動という二つの問題系を基本的な枠組みとして設定し、デリダの著作の読解に軸足を置きつつ、ラカンとデリダの議論を分析・比較検討した。 言語に関しては、シニフィアンの理論における主体の分裂とメタ言語の不在という論点を軸に、1950年代~60年代初頭までのラカン理論の変遷を再構成した。また、『声と現象』や『有限責任会社』におけるデリダの言語論を、特に反覆可能性と空間化といった戦略素を軸として分析した。さらに、これらの個別に設定されたアプローチによって得られた成果を、デカルトのコギト、カントの超越論的統覚、これらに対するフッサールを介したハイデガーによる解釈へと流れる、近代的な主体と表象をめぐる哲学言説を交差点とした布置に位置づけることを試みた。 欲動に関しては、特にラカンのセミネール『精神分析の倫理』と『精神分析の四基本概念』、ならびに後者と同時期のテクストである「無意識の位置」を参照し、<もの>・対象a・疎外と分離といったラカンの主要概念を、死の欲動の再解釈という枠組みのなかに位置づけた。また、「思弁する――『フロイト』について」におけるデリダの死の欲動の解釈を、差延や代補といったデリダ独自の戦略素の機能との関連から分析し、そこでの権力の自己拘束をめぐる議論を後期デリダにおける主権性の脱構築の源泉として考察した。そのうえで、ラカンとデリダがともに死の欲動のアポリアを快原理と現実原理の相補的・循環的関係において、構造的な不可能性の契機として捉えている点で一定の共通性が認められること、主体の位置づけをめぐって両者の根本的な差異が先鋭化することを跡付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年はデリダ没後10年にあたり、デリダに関する発表機会が予定より多かったことから、当初は二年目(2015年度)に行う予定であったデリダのテクストの読解を先取りしこれに多くの時間を割くことになった。こうした事情から、当初一年目に予定していたラカンの理論変遷の分析の一部(1970年代のラカン理論の分析)は2014年末から着手することとなった。この点で、必ずしも当初の計画通り研究を行えたわけではないものの、あくまで研究遂行の手順の部分的変更であったため、計画全体としてみれば順調に研究が進んでいると判断する。 本年度は成果発表の機会を比較的多く持ったこと、そこで同世代の研究者と交流を持てたことが大きな収穫となった。特に、哲学若手研究者フォーラムにおける共同ワークショップ「ジャック・デリダにおける反復可能性の問題について」や、デリダ没後10年を記念するきわめて大規模なシンポジウムでの発表や討議では、多くの貴重な示唆を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度はフランスでの在外研究に入るため、26年度に比べ成果発表の機会が少なくなる予定である。そのため、より多くの時間を精緻な文献読解のためにあてるとともに、フランス本国で多くの研究者とコンタクトを取り、自身の研究水準の向上に努めたいと考えている。研究計画に関しては、26年度における手順の一部変更を受けて、当初は26年度中に行う予定であった1970代のラカン理論における言語(特に文字)の位置づけの分析を優先的に行うこととする。また、26年度より自身の研究と並行して哲学若手研究者フォーラムの運営に携わっており、今後はこれまで以上に、自身の研究遂行と合わせた研究の場の構築ないし研究者間のネットワークの構築に貢献したいと考えている。
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Research Products
(6 results)