2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J04869
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 征史 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 高等教育への教育投資 / 賃金格差 / Human Capital / Signaling |
Outline of Annual Research Achievements |
私のこれまでの研究では、教育投資が将来所得に与える効果として人的資本蓄積効果とシグナリング効果という2つの効果を取り入れたモデルを分析してきた。教育投資量と将来所得との間にこの2つの効果が存在するということは既存の実証分析により広く認められていたのだが、理論研究においてこの2つの効果の両方を取り入れたものが非常に少なかった。よって、今年度の頭半年は本研究と関連する理論研究をサーベイすることに専念することになってしまった。しかし、その膨大なサーベイの結果、これまで自分が焦点を当ててきたマクロ経済学の分野とは異なる分野からも本研究を関連させることができるようになり、本研究の位置づけを明確に論文に記述することができたと感じている。今年度は、 ・2014 Asian Meeting of the Econometric Society, Academia Sinica, Taipei, Taiwan, 2014/6/20-22 ・The Tenth Annual Conference of Asia-Pacific Economic Association, Thammasat University, Bangkok, Thailand, 2014/7/11-12 ・第9回若手経済学者のためのマクロ経済学コンファレンス、一般報告、査読・討論あり、大阪大学中之島センター、2015年3月7日、8日 の2度の海外報告と1度の国内報告を行い、教育投資と所得格差に関する研究の専門家に討論を頂くなど、様々な有益なコメントを頂くことができた。また、学会においては分野外の研究者からも本研究に関するご指摘を頂くことができ、本研究を新たな視点から評価し直すことができた。今はこれらのコメントを反映させて改定した論文を学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標としては、研究論文を国内・海外の学会で報告し、教育や所得格差などを分析されている専門家に対して自分のモデルを紹介し、本研究に関してコメントを頂きたいと考えていた。当初の目標通り、今年度は支給された研究費を使って多くの学会等で報告でき、本研究の政策インプリケーションを提唱することができた。 一方で、昨年度は本研究結果の実証分析を目標にもしていたが、これに関してはまだ分析に取り組めていない。モデルで描写している教育投資をデータとして入手することが困難であり、今後もしデータの入手が可能となれば、別論文としてこの実証分析も行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の私の研究では、人的資本投資とシグナリングという2種類の教育投資をモデル内で描写しており、賃金格差の動学分析を行ってきた。しかし、シグナリングと賃金格差の動学との関係を分析した研究が非常に少ないため、この2つの関係に絞って分析を行うことにも大きな価値があると学会で討論者にご指摘いただき、これを今後進めたいと考えている。つまり、既存の私のモデルから人的資本投資を省いて簡単化したモデルを再構築し、シグナリングと賃金格差の動学に関するベースモデルを作ることが目標となる。 ここで目標とするベースモデルの構築自体は困難なく進められると予想しており、これが完成すれば新たな拡張を導入したいと考えている。
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