2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J05067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 祥宏 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 分子の自己組織化・自己集合 / 集合過程・メカニズム / 積分方程式理論 / 密度汎関数理論 / 数理モデル / マスター方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己組織化・自己集合は系中に存在する構成要素が自発的に秩序構造を形成する過程である. 分子スケールにおける自己集合は, 生体系および物質系に共通してみられ, どのように分子が組みあがるのか, という原理に非常に関心がもたれている. 本研究では, この現象を記述する新たな方法論を確立し, それに基づいて分子の自己集合を調べることを目的としている. 自己集合では, 無数の構造に関する統計サンプリングや反応の時間スケールが長いことが問題となり, 分子シミュレーション法の適用は非常に困難である. 統計力学に立脚した方法論では上記問題の解決が期待できるが, 自己集合を記述できる方法論は未開拓である. そこで, まず積分方程式理論(RISM法)をウイルスカプシドの粗視化モデル系に適用し, 分子の自己集合を記述する際の問題点を明確化した. これを踏まえて, 新たな理論の開発に取り組んだ. 単純な原子の周囲の集合体を記述するための密度汎関数理論を拡張して分子の形状を扱える理論を構築した. 理論は簡単な2原子分子モデル系に適用し検証している. さらに, 自己集合過程の理解において系の時間発展の要素も重要であると考えられるため, マスター方程式に基づく自己集合過程の研究にも取り組んだ. 自己集合反応の中間体や経路は大きな関心がもたれているが, それを調べる有効な方法は確立されていない. 近年, 実験で自己集合過程が調べられた八面体型金属カプセル錯体の系を対象とし, シンプルな数理モデルを導入した. マスター方程式に基づいてその時間発展を解析し, 簡単な素過程を仮定するのみで系の時間発展を大まかに理解できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の方法論の問題点を明確化した上で, 分子の自己組織化・自己集合を記述するための新規理論の開発に取り組んだ. 解決すべき問題はあるが, 着実に研究を進めており, 分子の集合体を記述できる新規統計力学理論の開発に至っている. さらに, 自己集合過程の時間発展を記述する数理モデルを提案した. これは, 従来検討が困難であった自己集合の時間発展に対する有効なアプローチとなる可能性がある. 以上のことから, 研究目的である新規方法論の開発はおおむね順調に進展しているものと評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
新たに開発した統計力学理論をウイルスカプシドの粗視化モデル系へ適用した際, 計算が破綻する問題が生じた. これは, RISM法にも共通した分子内相関関数の物理的な妥当性にも関わる問題である可能性が高い. そこで, 今後は, 分子OZ理論を用いてこの点を検証する. これを踏まえた上, 自己集合に適用可能な枠組みに展開する. また, 提案した数理モデルは幾何構造を排した非常にシンプルなものである. 反応経路における統計因子の役割や, 幾何構造の影響に関して, 検討する.
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Research Products
(6 results)