2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本中世における地域社会の復原的研究-文献資料と荘園現地調査を基盤として-
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14J05070
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土山 祐之 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 荘園 / 河口荘 / 興福寺大乗院 / 室町幕府 / 地域社会 / 現地調査 / 村落 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は荘園現地調査と文献資料の検討から、地域社会の復原とその形成過程を明らかにするものである。本年度は調査対象地である越前国河口荘(現福井県坂井市・あわら市)の現地調査を実施した。調査では坂井市・あわら市全域の神社の分布、ならびに春日社の分布を把握した。河口荘は10の郷(本庄郷・新郷・新庄・荒居・兵庫・関・大口・王見・溝江・細呂宜)によって構成される荘園であるが、それら名称の多くが現在の大字として存続していること、各大字に春日社が存在し平安期に勧請されたという伝承が残っていることと調査の結果を踏まえ、現在残る春日社の分布が河口荘の荘域とほぼ一致することが確認できた。このことから、荘園領主である興福寺は宗教的イデオロギーを通して広大な河口荘の支配を目指そうとしたのではないか、という仮説を得ることができた。この仮説については、来年度以降文献資料の検討を通じて明らかにしていきたい。 文献資料の検討では、室町中期の興福寺大乗院について検討した。特に興福寺大乗院と大乗院の門徒である松林院とで展開された、越前国河口荘新郷の武澤名・新荘の田成畠銭・坪江郷得元名の給分問題を発端とする相論を検討した。その結果、門徒は門跡の意向に従うだけでなく、自らの利益のためにときには門跡と相反することもあることを指摘。さらに、門徒は門跡に対抗するために室町殿の御判御教書をもらい受けるなど、縁故を頼りに寺外の様々な勢力に助力を嘆願するということも明らかにした。この結果は2014年度日本史攷究会大会にて報告した。以上が本年度の研究実績である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、荘園現地調査と寺院組織研究を研究方法の二つの柱として掲げている。その上で、本年度は河口荘の調査を実施し、大字の確認や神社の分布を把握できたため、現地調査はおおむね順調に進行している。寺院組織研究についても、室町期における門跡と門徒との関係や興福寺と幕府との関係などに言及することができ、こちらもおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、河口荘にある「十郷用水」を中心とした水利灌漑の調査を実施する。その上で、水利灌漑を通じて河口荘における地域社会の形成について検討していく。文献資料からは室町期における興福寺一乗院と大乗院との確執について検討し、同時に室町期における興福寺と幕府との関係性も引き続き検討していきたい。
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Research Products
(1 results)