2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素のα効果に基づいた触媒的C(sp3)-H結合変換法の開発と合成化学への応用
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14J05249
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鳥越 尊 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 合成化学 / 結合活性化 / 遷移金属触媒 / 炭素-水素結合官能基化 / 有機ケイ素化合物 / ヘテロ環化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
配向基に依存しない、遷移金属触媒を用いた不活性な炭素-水素結合の変換反応に基づく有機合成手法の開発に取り組んでいる。平成27年度は、交付申請書研究実施計画に記載した、研究項目②「遷移金属触媒によるケイ素のα位C(sp3)-H直接変換反応の開発」を実施した。これまでに明らかとしたC-Hボリル化の知見を基にトリメチルシリル基を有する不飽和分子のイリジウム触媒反応を探索した結果、ケイ素上メチル基C-H結合の炭素-炭素三重結合への分子内付加反応を見出した。ベンゼン環でトリメチルシリル基と炭素-炭素三重結合を連結し、自由度を制限した基質分子構造が重要であり、また2,2'-ビフェニル骨格を有する二座リン配位子を用いることにより有効な触媒が形成されることが明らかとなった。ケイ素の効果を明らかとするために、トリメチルシリル基をメトキシ基に置き換えた基質を検討したところ、予想に反し高い効率で分子内付加反応が進行したことから、今回の触媒系が基質一般性の高い分子変換手法に展開できる可能性が示唆された。また、平成26年度に引き続き研究項目③「アルキル骨格上のトリメチルシリル基を水酸基等価体として活用する有機合成」を検討した。ケイ素上メチル基選択的なC(sp3)-Hボリル化を経るアルキルトリメチルシランのアルコールへの変換法を発展させ、ジメチルシラシクロペンタンの1,4-ジオールへの変換を確立した。さらにこれを鍵とするスフェリン酸(天然物)の合成を達成した。以上の成果は、炭素-水素結合の触媒的活性化と効率的変換に有益な知見であり、精密分子変換手法の発展に資すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アルキルトリメチルシランのアルカノールへの変換法開発、ならびにC(sp3)-H結合の触媒的変換反応開発において、大幅な進展が達成されたため。特に、新手法に基づき不活性なジメチルシラシクロペンタンを1,4-ジオールへ変換できたことや、過去に例のないメトキシ基のC(sp3)-H結合活性化に基づく分子内付加反応を見出した点は特筆すべき成果であり、今後の研究展開に資すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
C(sp3)-H結合の触媒的付加反応について、分子間反応への展開を図る。また、C(sp3)-Hボリル化や分子内付加反応に基づく不斉中心の立体選択的構築をめざす。
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