2014 Fiscal Year Annual Research Report
抗菌ペプチドの抗腫瘍活性分子メカニズムおよび化学療法の効果増強作用の解明
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14J05415
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒田 健吾 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / カセリシジン / 大腸癌細胞 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
miRNAは、21~25塩基対程度の機能性non-coding RNAであり、mRNAを制御することで細胞増殖・アポトーシス・発生と分化・代謝などの多岐にわたる調節機能を有している。近年、癌細胞において多くのmiRNAの発現に変化があることが報告されている。 我々はこれまでヒト由来のカセリシジンファミリー抗菌ペプチド(AMP)であるLL-37およびそのアミノ酸置換体であるFF/CAP18が大腸癌細胞であるHCT116に対しアポトーシス様の細胞死を引き起こすことを明らかにしている。抗菌ペプチド(AMP)による大腸癌細胞への作用として、miRNAの関与を明らかにするため、LL-37およびFF/CAP18を用いて大腸癌細胞HCT116を処理し、miRNAを含むRNAを回収し、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイの結果、LL-37による刺激によって40 μg/mLの濃度では17種のmiRNAが2倍以上に発現が上昇し、80 μg/mLの濃度では7種のmiRNAが2倍以上の発現増加が確認された。発現が1/2以下に減少したmiRNAの数は40 μg/mLの濃度では8種、80 μg/mLの濃度では6種であった。アミノ酸置換体であるFF/CAP18によるmiRNAの変動はLL-37 40 μg/mLの濃度において2倍以上の発現が見られたmiRNAは17種、1/2以下に発現が低下したのは30種でありLL-37で確認されたmiRNAとは数も種類も異なることが明らかになった。以上より、AMPによる大腸癌細胞への作用にはヒトが備えたLL-37が特異的に発現を制御しているmiRNAが存在していることが示唆され、その種類に関係なくAMPによって共通したmiRNAも存在していることが明らかになった。 次年度以降、発現に変化のあったmiRNAについて、その役割を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度について、順調に進展している理由として以下の3点を挙げる。 1. 年次計画における1年目の予定は「大腸癌細胞における抗菌ペプチドによるmiRNAの発現の増減を確認すること」であり、おおむね計画通りにmiRNAの発現に変動を確認できたこと。 2. さらにリストアップした発現に変動があるmiRNAには癌との関与が報告されているものも多数存在しており、今後の研究においてもターゲットがある程度しぼれていること。 3. マイクロアレイで発現が変動していることが確認できたmiRNAについて、RT-realtime PCRによって再現性を確認できているものが複数あること。
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Strategy for Future Research Activity |
発現に変動があったmiRNAのうち、LL-37およびFF/CAP18の両方について発現が確認でき、なおかつRT-realtime PCRでも再現性がとれたものをターゲットとし、HCT116細胞へトランスフェクションを行う。その後、細胞の増殖試験やアポトーシスの検出によって細胞への影響を確認する。トランスフェクションについては既にリポフェクションとエレクトロポレーションについて導入率の検討を行っており、導入されたmiRNAとこれまでの研究の結果を結びつけられるようなデータを回収していく予定である。また、レンチウイルスベクターを用いたmiRNAの過剰発現株やsiRNAによるmiRNAノックダウン細胞を作成し、既存の抗がん剤の効果を検討する予定である。
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Research Products
(9 results)