2014 Fiscal Year Annual Research Report
限定合理性に関する研究:フレーミング効果と探索費用による意思決定プロセスの分析
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14J05576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
槁立 洋祐 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 意思決定理論 / 行動経済学 / 限定合理性 / 満足化原理 / 推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要な目的は、意思決定主体の推論過程について標準的な意思決定理論と行動経済学を包摂するようなモデルを構築することであるが、平成26年度は以下のように部分的に研究成果をまとめることができた。現実の意思決定主体は、自身の選択状況について、標準的な意思決定理論で前提とされる(たとえば、意思決定主体はすべての選択肢について把握し、その中で最も望ましい選択肢を決定することができる)ような形で捉えているとは限らない。そのため、そのような状況から、意思決定主体はどのように選択肢を決定するのか、に関してより一層の理解を深めていくことは重要である。しかしながら、この種の研究は重要と認識されながらも、これまで十分な分析がなされてこなかった。そこで本研究では、主体が持つ情報として選択肢の属性に着目し、それらを基にどのように選択肢を1つ決定するか、という意思決定ルールを定式化した。具体的には、選択肢の各属性ごとに選択肢を評価し、各属性による評価において最も高い評価を持つ選択肢を仮想的に組み合わせた理想的な選択肢(本研究ではtarget pointと呼ぶ)を検討する。意思決定主体はその理想的な選択肢(target point)に最も類似な選択肢を選ぶとする。本研究ではそのモデルをくじの集合上の選好で公理化できることを示した。この研究成果はワーキングペーパーとしてすでにまとめられており、国内外の研究会や学会での報告が予定されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度中に研究会や学会で発表し、フィードバックを得て改訂した後、投稿することが理想であったが、意思決定ルールの公理化という目標は達成された。上記の研究では、1回限りの意思決定状況のみを取り扱っていることや選択肢の属性間の補完性の問題は検討していないため、今後は繰り返し意思決定するような動学的状況の分析や属性間の関係を考慮したモデルの構築を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
ワーキングペーパーとしてまとめることができた論文は、国内外の研究会や学会で発表し、平成27年度中の投稿を目指す。また、現在進行中の研究プロジェクトに関しては、平成27年度中の草稿の完成を目指す。さらに、本研究で得られた結果は、実験的アプローチや実証的アプローチからどのような知見が得られるのか、検討する。
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