2015 Fiscal Year Annual Research Report
EP4受容体結合分子EPRAPに着目したアルツハイマー病治療の探索
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14J05605
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤川 理沙子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 脳 / グリア細胞 / 炎症 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
A. EPRAPの脳内炎症での機能を解明 我々はEP4受容体新規結合分子EPRAPに着目した研究を行っている。中枢におけるEPRAPの局在や働きはこれまで全く解明されていなかったが、昨年度EPRAPがグリア細胞に存在し炎症促進に働くことを明らかにした。本年度はさらに研究を発展させ、以下の点を明らかにした。1) 無刺激時のEPRAP欠損ミクログリアに異常は見られなかった。2) ミクログリアのEPRAPの炎症促進作用にMKK4-JNK経路が関わる。3) EPRAP 過剰発現マウス由来のミクログリアで炎症が促進された。 B. アルツハイマー病 (AD) の病態生理におけるEPRAPの意義を解明 認知症の中でもADは50%以上と最多を占めており、その治療には原因物質であるβ-amyloid (Aβ) をターゲットとした治療薬が必要である。我々はEPRAPがAβ産生のみならず、ADを悪化させる脳内炎症の両者を抑える新たな治療ターゲットとなる可能性があると考え、行動実験を行ったところ、EPRAP欠損マウスとアルツハイマー病モデルマウスであるJ20マウスとの交配によるcompound mutantマウスで不安の異常が改善されることが明らかとなった。本研究は、根本的治療薬が存在しないADの研究に大きく貢献することが予想される。 C. 精神疾患におけるEPRAPの意義を解明 昨年度、行動評価の初期検討として野生型マウスとEPRAP欠損マウスの網羅的行動実験を実施し、EPRAPが不安の減少や注意力低下など、精神疾患様の行動異常を示すことを明らかにした。EPRAPが精神疾患に関連している可能性を考え、本年度は精神に重要な神経伝達物質を測定し、 EPRAP欠損マウスの脳でノルエピネフリンが減少していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究に積極的に取り組み、期待通りの研究成果が得られた。昨年度の研究をさらに発展させ、ミクログリアEPRAPの炎症促進作用に関わるシグナル経路等を明らかにし、研究成果を国際誌に投稿した。EPRAP結合蛋白の発見には至らなかったが、現在も条件検討を続けている。またEPRAP欠損マウスとアルツハイマー病モデルマウスであるJ20の交配によりcompound mutantマウスの行動解析を予定通り実施し、compound mutantマウスでアルツハイマー病様の不安の異常が改善することを明らかにした。さらに、EPRAP欠損マウスが精神疾患様症状を示すことは、計画当初には予期していない結果であったが、本年度も検討を続け、EPRAPが影響する神経系を特定した。これらの研究成果をとりまとめ、国内学会で1回、国際学会で2回発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
A. EPRAPの脳内炎症での機能を解明 ミクログリアのEPRAPが炎症を促進するメカニズムを解明していくことで、中枢性炎症疾患の病態解明・治療法確立につながると考える。EPRAPはアンキリンリピートと呼ばれる蛋白間結合に関係する領域を含んでいるため、炎症に関わるEPRAP結合蛋白の探索をおこなう。昨年度、免疫沈降法を用いて結合蛋白を探索したが、発見には至らなかった。免疫沈降のバッファー等の条件を再度検討し、探索を続ける。 B. アルツハイマー病 (AD) の病態生理におけるEPRAPの意義を解明 定量的PCR法やELISA法を用いて、J20マウスとJ20+/- EPRAP-/- compound mutantマウスで脳内炎症とAβ量を比較する。研究成果を国際誌に投稿する。 C. 精神疾患におけるEPRAPの意義を解明 ノルエピネフリンの起始核がある橋に着目し、EPRAPがノルエピネフリンに影響を及ぼすメカニズムを解明する。また在外研究にて、行動実験に組み合わせて精神疾患のメカニズムを更に追及できる技術、オプトジェネティクスを習得する予定である。研究成果を国際誌に投稿する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] EP4 Receptor-Associated Protein in Macrophages Ameliorates Colitis and Colitis-Associated Tumorigenesis2015
Author(s)
Masato Nakatsuji, Manabu Minami, Hiroshi Seno, Mika Yasui, Hideyuki Komekado, Sei Higuchi, Risako Fujikawa, Yuki Nakanishi, Akihisa Fukuda, Kenji Kawada, Yoshiharu Sakai, Toru Kita, Peter Libby, Hiroki Ikeuchi, Masayuki Yokode, Tsutomu Chiba.
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Journal Title
PLOS Genetics
Volume: 11
Pages: 1-20
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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