2014 Fiscal Year Annual Research Report
人工椎間板構築を目指した可逆的硬化-軟化生体模倣ゲルの研究
Project/Area Number |
14J05612
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 健 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 特別研究員DC1
|
Keywords | 生体適合性ハイドロゲル / ダイラタント流体 / 自然酸化架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における重要な点は「ダイラタント流体を保持するゲルが生体適合性を有すること」および「ゲルの中でダイラタント流体が駆動すること」の二点である。今年度は一点目に上げた生体適合性を有するハイドロゲルの研究に従事した。具体的には生体適合性高分子(ヒアルロン酸)を用いてハイドロゲルの構築を行った。ヒアルロン酸の側鎖に存在するカルボキシ基にアミノドーパミンを付加することで、ドーパミン導入ヒアルロン酸(HA-dopa)を合成した。興味深いことに、このHA-dopaは生体pHにおいて自然酸化によってゲルを構築し、そのゲルの架橋点は化学結合によって構築されていた。この酸化による架橋の利点は人体内部で架橋剤(しばしば人体に対して毒性を示す)を用いずにゲルを作ることが可能であるという点である。同時に、HA-dopaの水溶液を撹拌して静置するだけでゲル化することから、たとえばダイラタント流体と混合したのち超音波を当てて均一に分散させることが可能である。ダイラタント流体は微粒子と水溶液の懸濁液で構築されているが、微粒子が均一に分散しているほど規定化でき、評価がしやすくなる。その点でも非常に優れたゲルの構築法を確立したといえる。また、ゲルの構築法を確立したのみならず、このゲル化のプロセスを継時的に動的粘弾性測定法を用いてプロットした。さらに紫外分光光度計を用いてゲル化に伴って呈色変化を観察し、HA-dopaのゲル化が酸化によるものであることも証明した。以上より、新たな研究対象を開拓したとともに今後の「人工椎間板構築を目指した可逆的硬化一軟化生体模倣ゲルの研究」に役立つゲルのマトリックスを作り出すことに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験の主軸である「生体適合性ゲルの構築」および「ダイラタント流体の駆動評価」の2軸のうち、「生体適合性ゲルの構築」に成功した。今後はこのゲルをもとにして、ダイラタンシー現象が起こる条件を精査していくことによって目標とする「人工椎間板構築を目指した可逆的硬化一軟化生体模倣ゲル」を創生することが可能である。そのため、今年度の研究進度はおおむね順調と定義した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ダイラタンシー現象は、ダイラタント流体を構築する微粒子密度と、それを分散する分散媒の粘度によって駆動が制限されるということが明らかとなっている。27年度からの研究方針は分散媒の粘度を一定としたときの微粒子の密度を変化させて細かく条件検討を行う。具体的にはゲルの内部に内包する微粒子の重量分率を変化させて、動的粘弾性測定法によってダイラタンシー現象が起こっているか否かを確認する。測定条件としては、ゲルにかける応力を経時変化させてその時のゲルの貯蔵弾性率を観察する。
|
Research Products
(6 results)