2014 Fiscal Year Annual Research Report
表面電荷密度波系における電荷と格子の原子分解能測定
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14J05691
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩田 孝太 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 電荷密度波 / 一次元金属 / 走査プローブ顕微鏡 / 有機分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度前半は、In/Si(111)-(4×1)表面において、室温環境下で走査型トンネル顕微鏡(STM)で観察される欠陥近傍の周期性の変調が本当に電荷密度波かどうかを直接調べることを目指し、ケルビンプローブ力顕微鏡(KPFM)による測定を行った。その結果、In原子鎖に沿った方向に列状のコントラストが観察された。In原子鎖内において、接触電位差はIn原子鎖外側のIn部分で大きく、内側のIn部分で小さくなっていることが明らかとなった。 また、In/Si(111)-(4×1)表面上の一部の吸着物は、欠陥近傍によく似た周期性の変調を誘起することが知られている。そこで、吸着物が分子の場合の構造を調べるために、室温原子間力顕微鏡(AFM)による測定を行った。その結果、分子の化学構造を観察することに成功した。これまでに、AFMによって、分子の化学構造や力学的特性などの測定が可能であることが示されてきたが、これらの実験には、極低温や探針の処理が必要とされてきた。そのため、今回の実験は世界初の室温での観察結果である。また、探針に特殊な処理をしなくとも、化学構造の観察が可能であることも分かった。さらに、力学的分光と理論計算により、単一の有機分子の弾性を見積もることができた。これらの結果は、今後AFMを様々な系に応用していくうえで非常に重要な結果である。 年度終盤には、低温での実験を開始しており、今後の実験を進展させるために不可欠な、液体窒素と低温装置の扱いを習得することができた。また、目的の試料の作成にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、室温AFM・KPFMによる格子位置と電荷分布に起因した接触電位差の観察、および、低温装置の立ち上げを行う予定であった。 室温でのAFM・KPFMによる測定では、格子位置の原子分解能観察と、接触電位差の観察に成功した。それにより、接触電位差は、In原子鎖内において、外側のIn部分で大きく、内側のIn部分で小さいということを明らかとした。 また、追加の実験として、表面吸着分子の構造をAFMによって調べた。その結果、室温環境下で分子の化学構造を観察することに、世界で初めて成功した。また、理論計算と組み合わせて、有機分子の力学特性を見積もることもできた。 さらに、低温において発現する電荷密度波を観察するために、低温装置を立ち上げ、装置や寒剤の扱いを学んだ。装置は、本研究課題に必要な液体窒素温度において、問題なく原子分解能を達成している。試料作成の条件の最適化も進行しており、目的の試料の観察に成功している。 以上のように、室温測定においては、当初の予定をほぼ完了したうえで、追加の実験結果も得ることができた。また、低温での測定の用意もできている。そのため、(2)おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で、予定していた室温での実験はすべて終了した。今後は予定通り低温でのAFM、KPFMによる原子分解能測定を行い、欠陥が電荷密度波に与える局所的な影響を調べる。低温装置で使用する探針は、AFMにおいて安定して原子分解能を達成する探針を得ることが難しく、結果を得るまでに時間がかかる可能性がある。そこで、収束イオンビームによる探針の先鋭化や、液体ヘリウム温度まで冷却し、特定の単原子・分子による探針先端の修飾などといった探針の処理を行う準備もしておく。また、表面吸着分子の影響も引き続き調べていく。
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Research Products
(5 results)