2014 Fiscal Year Annual Research Report
B細胞性腫瘍の発生および病型決定に関わるサイクリンD1の役割の解明
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14J05725
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有馬 浩史 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 多発性骨髄腫 / サイクリンD1 |
Outline of Annual Research Achievements |
恒常的なサイクリンD1の過剰発現により、B細胞由来の腫瘍を発生するマウスモデルを作出するため、まずは、免疫グロブリン軽鎖プロモーター制御下にサイクリンD1を過剰発現させるレンチウイルスベクターを作製してp53ヘテロ欠損マウスの骨髄細胞へ遺伝子導入した。この実験では、終末分化段階のB細胞で特異的なサイクリンD1の過剰発現に成功したものの、レンチウイルスベクターの骨髄細胞への感染効率が数%程度までしか上昇せず、B細胞由来の腫瘍を発生するマウスモデルとしては非効率的と考えられた。 そこで次に、CAGプロモーター下に2つのloxP配列で挟まれた転写停止配列と、サイクリンD1 cDNAをつないだ導入遺伝子を作製し、C57BL/6マウスの受精卵へマイクロインジェクションを行い、Creリコンビナーゼ発現後にサイクリンD1を恒常的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。現在、トランスジェニックマウスとCD19-CreマウスおよびIgG1-Creマウスを交配して、分化段階初期および終末分化段階のB細胞におけるサイクリンD1の過剰発現の影響を解析中である。 更に、B細胞由来の腫瘍形成過程においてサイクリンD1と協調的にはたらく因子の一つとして考えられるActivation-induced cytidine deaminase(AID)の過剰発現と、B細胞性腫瘍の国際予後因子(International Prognostic Index:IPI)および予後との関連を、臨床検体の免疫組織学的評価により検討した。その結果、AIDの発現とIPIスコアとの間に正の関連性を認め、更に、AID陽性症例の無増悪生存率はAID陰性症例の無増悪生存率より低い傾向を認めた。本研究結果は、第76回日本血液学会学術集会において優秀ポスター賞として表彰された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レンチウイルスベクターによる遺伝子導入効率が十分ではないという問題に直面したが、実験方法を柔軟に変更して新規トランスジェニックマウスの作製に速やかに成功し、解析を進めることができている。 実験動物の解析および臨床検体の免疫組織学的検討を行い、多角的な視点から再現性の高い実験データを効率的に集積できている。 問題に直面しても柔軟かつ迅速に実験計画を修正して着実に成果に結び付けることができており、平成26年度には研究成果の一部が第76回日本血液学会学術集会において優秀ポスター賞として表彰された。
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Strategy for Future Research Activity |
新規作製した、Creリコンビナーゼ発現後にサイクリンD1を恒常的に過剰発現するトランスジェニックマウスに、CD19-CreマウスおよびIgG1-Creマウスを交配することで、分化段階初期および終末分化段階のB細胞におけるサイクリンD1の過剰発現の影響を、効率的に解析可能である。サイクリンD1が、様々な分化段階のB細胞の細胞周期、増殖およびアポトーシスへ与える影響を検討する。また、p53ヘテロ欠損マウスにおけるサイクリンD1の過剰発現により、様々な分化段階のB細胞を由来として異なる病型のB細胞性腫瘍が発生する可能性を検討する。 更に、マウスモデルで形成された腫瘍のアレイCGHおよび次世代シークエンスによる遺伝子解析により、サイクリンD1とともに腫瘍の維持および進展に関わる因子を抽出して明らかにするとともに、マウスモデルにおいて抽出された主要な因子を治療標的とする新規治療の有効性を検討する。
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Research Products
(1 results)