2015 Fiscal Year Annual Research Report
風媒花植物の性配分における適応進化メカニズムの解明
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14J05730
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中原 亨 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 風媒植物 / 性配分 / 草丈 / オス適応度 / メス適応度 / ブタクサ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度、草丈と花粉生産量の増加が風媒花のオス適応度を増加させることを明らかにしたが、平成27年度は追加解析により、草丈の増加とともに最大花粉散布距離が増加していること、そして花粉生産量は花粉散布距離に影響しないことを明らかにした。これらの結果は、草丈の増加が花粉散布距離の増加を通してオス適応度を増加させていることを示唆するものであり、サイズ増加とともに性配分がオス機能に偏るという風媒花のサイズ依存的な性配分の根拠となるものである。これらの研究結果は、日本進化学会第17回大会(2015年8月)で発表し、優秀学生ポスター発表賞を受賞した。 この研究から、風媒花における草丈の重要性が伺える。しかし自然界では食害や草刈りなどによって主茎の伸長が阻害される機会が多く、草丈増加に伴うオス適応度の増加が見込めないことが考えられる。平成27年度は、そのような場合に植物が見せる反応について詳しく調べた。具体的には、(1)主茎を損傷した株は性配分をメス機能に偏らせることで適応度を獲得する、(2)主茎を損傷した株は側枝の伸長を促進させて草丈を増加させ、性配分を変化させることなく適応度を獲得する、という2つの仮説を立て、ブタクサ分布地域における野外調査と圃場における茎頂切除実験にてこれらを検証した。 検証の結果、主茎が損傷すると側枝の伸長が促進されることが分かった。側枝は垂直方向に伸び続け、損傷のなかった株と同程度の草丈になっていた。また、損傷株と普通株の間で雄花数・雌花数を比較したが、ともに有意な差はなかった。これらの結果から、主茎の伸長が阻害された場合は側枝の伸長によって草丈を補い、性配分を変えずとも適応度を獲得する、という仮説(2)が支持された。本研究の結果は第47回種生物シンポジウム(2015年12月ポスター)ならびに日本生態学会第63回全国大会(2016年3月英語口頭)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は計画変更を余儀なくされたが、平成27年度は立て直した計画に沿って研究を遂行することができた。また、日本進化学会ではポスター賞を受賞することができ、研究に対して他の研究者からも一定の評価を得ることができたと考えている。一方で論文執筆と一部のデータ整理がまだ終わっていないため、今後の努力が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成28年度は、論文執筆を中心に研究を進める。また、6月にアメリカ・テキサス州で行われるEvolution Meetings 2016での学会発表を予定しており、海外の研究者に研究を紹介し、コメントをもらいたいと考えている。また、平成26年度に引き続いて行ってきた草丈・性配分の日米間比較についての追加実験のデータを整理し、解析していきたいと考えている。
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