2015 Fiscal Year Annual Research Report
長波長蛍光プローブによる体内深部におけるがん細胞蛍光イメージング
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14J05763
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩立 竜 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / がんイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの成果の論文発表を行った。術中における微小がんの選択的可視化には、がん選択的にactivatableな蛍光プローブの開発が必要である。これまで本研究グループでは、分子内スピロ環化平衡を示す蛍光色素HMRGを基本骨格として、500 nm程度の波長で機能するactivatableなプロテアーゼ活性検出蛍光プローブ群を開発してきた。そのひとつであるgGlu-HMRGは、既存のプローブに比べ高感度にGGT の活性を検出することで、GGTを高発現するがん種は直径1 mm以下の微小がんであっても迅速に可視化できる。このHMRG骨格を出発点とし、キサンテン環の片方のアミノ基からアルキル鎖を伸長することで、吸収・蛍光極大波長を長波長化した一連の非対称ローダミン誘導体を合成した。さらにキサンテン環の2位にハロゲン修飾を施すことで、適切なpKcycl (50 %の分子がスピロ環化体となるpH) を有する新規ローダミン骨格HMJCRを合成した。本骨格にペプチドを結合することにより、HMRG骨格に基づいた蛍光プローブ群よりも50 nm程度長波長化した新たなGGT活性検出蛍光プローブgGlu-HMJCRを開発し、種々のイメージングでの検討から、がん特異的な蛍光検出が可能であることを実証した。また、HMRGベースのプローブとの併用で、異なるプロテアーゼ活性を持つ複数のがん種を多色イメージングによって弁別することに成功した。 また、本年度の年次計画に従い、昨年度までのローダミンでの知見を、シリルローダミンを初めとする他の長波長色素骨格に適用し、目的の機能を持つ分子骨格の設計と合成に取り組んだ。褪色に強く明るい蛍光骨格を修飾し、π共役系の拡張によって励起・蛍光極大波長を長波長化し、使用環境下に適したpKaを持つ新たな非対称骨格を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
mmオーダーの微小ながんの可視化・診断技術を臨床応用するにあたって、高いS/N比を持つactivatableな有機蛍光小分子を論理的に設計・合成することは極めて重要である。私は、昨年度までに見出した分子構造と波長やスピロ環化平衡の平衡定数の関係性を基に、ローダミン骨格の特性を微細に調整することで多色化を実現し、in vivoで複数のプロテアーゼ活性を同時に可視化・弁別することに成功し、論文発表を行った。現在ではこれらの知見を他の長波長色素骨格に適用し、深部のイメージングが可能な蛍光プローブを作成している。これらはリンパ節転移のイメージングを達成する上で非常に重要な知見と成り得るため、期待以上の研究の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は当初の研究計画通り、これまでの研究で得られた化学的知見をシリルローダミンに適用することで作成された新規長波長化がん蛍光プローブを用い、がん細胞を移植したマウスのがん近傍に投与しin vivoがんイメージングを行うことで分子を評価する。生体内での蛍光プローブの挙動等のデータから課題を抽出し、分子設計にフィードバックすることでさらなるデザインの拡張を目指す。また、より深部に存在するがんを検出するために、蛍光プローブからのシグナルを効率的に検出する方法を共同研究する。
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Research Products
(10 results)