2015 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体ERRγを介したビスフェノールAのシグナル毒性の分子機構解明
Project/Area Number |
14J05913
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松山 祐昂 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ビスフェノールA / 核内受容体 / シグナル毒性 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビスフェノールA(BPA)はポリカーボネート樹脂や接着剤の原料として用いられる低分子化合物である。一方、ごく微量で胎児や乳幼児に悪影響を及ぼす内分泌撹乱物質であり、その原因の一つとしてBPAが非常に強く結合する核内受容体ERRγを介した内分泌撹乱作用が考えられている。本研究の目的は、ERRγを介したBPAのシグナル毒性の分子メカニズムを解明し、その低用量効果の実体を明らかにすることである。 BPAはDNAをメチル化、脱メチル化する可能性があり、これがシグナル毒性の分子機構解明につながる可能性がある。本年度は、BPAによる遺伝子のメチル化、脱メチル化を検証する実験系の構築に取り組んだ。DNAのメチル化は遺伝子上のCpGアイランドと呼ばれるCとGが多く存在する領域で起こる。したがって、人工的なCpGアイランドを挿入したプラスミドと実際のCpGアイランドをクローニングし、その遺伝子を挿入したプラスミドの作製を試みた。作製予定の8つのプラスミドのうち3つは作製が完了している。今後は、残りのプラスミドを作製すると共に作製したプラスミドを細胞に導入し、BPAのメチル化への影響を調べる。 また、ヒト子宮頸がん由来のHela細胞を用いた実験系の構築のため、Hela細胞に内在するDNAがBPAによってメチル化または脱メチル化されるかを検証した。その結果、BPAを暴露した細胞のDNAは暴露されていないものより、メチル化の総量が減少しており、シトシンが脱メチル化されていることがわかった。今後は、特定の遺伝子の配列に対してBisulfite試験を行い、どの遺伝子がBPAによってメチル化または脱メチル化を受けているのかを調べる。 BPA 標的核内受容体の探索についても取り組んでおり、甲状腺ホルモン受容体に結合する可能性が予想された。現在、結合試験系構築に取り組むと同時に活性試験も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の計画である細胞を用いたBPAによるDNAメチル化の検証実験系の構築については、今までに行われていない実験であるため実験系のデザインを行った。実験に必要なプラスミドの作製や細胞を用いたメチル化実験の検証などを行うことで検証実験系の構築に向け確実に進展している。 また、3年目に計画していた「ビスフェノールA標的核内受容体の予測法の開発」にも取り組み、甲状腺ホルモン受容体にBPAが結合する可能性が予想された。 さらに甲状腺ホルモン受容体の活性試験を行ったところ、特定の核内受容体と共存させることで活性が増強される増強効果を発見した。 このことから、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はBPAによるメチル化、脱メチル化の検証実験系構築の第一歩を踏み出すことができたため、次年度では、残りのプラスミドの作製や実験系構築完了を目指す。 また、構築した実験系により、BPAによる遺伝子への作用や核内受容体との関連性を慎重に解析する。これら実験に加え、以前明らかとなった遺伝子変異や塩基挿入がmRNAの発現に影響を及ぼすかをmiRNAなどの観点から調査する。 さらに、BPA標的核内受容体の探索法を確立させると共に甲状腺ホルモン受容体と特定の核内受容体による活性増強についても詳細に解析を行い、BPA低用量効果との関連性を明らかにしていく。 これら研究を進めていき、BPAの低用量効果の分子機構解明を目指す。
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Research Products
(18 results)