2014 Fiscal Year Annual Research Report
メソポーラスシリカの特性を活用する新規反応の開発とその応用
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14J05924
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉山 公二 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | メソポーラスシリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度の研究実施計画に基づき、以下の成果を得た。 (1) 細孔径を自由に変更できるメソポーラスシリカ(MPS)は、有用な素材として近年注目を集め、細孔内に金属を固定化したMPSがいくつか報告されている。しかし、ほとんどの研究が金属の担持利用に限られ、MPSの化学特性を利用した研究はほとんどない。そこで申請者はMPSの未開拓な特性を明白にするため、V-MPS3 (内径約3 nm) に加え、内径約2 nm及び4 nmのMPSの内表面のシラノール基にオキソバナジウムを共有結合させたV-MPS2とV-MPS4をそれぞれ調製した。3種類のV-MPSを用いて光学活性アリルアルコールのラセミ化経時変化を測定したところ、MPSの細孔径が大きくなるほど基質アルコールの細孔内への進入が容易であることが明らかになった。また、V-MPS内部は高極性反応場を形成しており、極性の高い化合物の方が細孔内に進入しやすいとも分かった。さらに、3種類のV-MPS(V-MPS2–V-MPS4)を用いてリパーゼ触媒DKR反応を行った。その結果、DKR反応においても細孔径と化合物の大きさが反応速度や副反応に密接に関係することが分かった。 (2) 本研究では、V-MPSを用いてプレニルアルコールから求核剤と反応させることにより水酸基直接活性化プレニル化反応を開発する。すでに申請者は予備実験で、インドールとプレニルアルコールをV-MPS存在下に反応させると、3-プレニルインドールが生じることを見出していた。そこで、本プレニル化反応を多様な芳香族化合物で検討した。その結果、ジメチルアニリンを用いた場合、2種類のモノプレニルアニリンの異性体混合物を合計収率50%で得た。本法はV-MPSにより水酸基の直接脱離を行っているため、操作の簡便性に加え、共生成物が水のみという環境調和性に優れた反応と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はH26年度の研究計画に従い本課題に取組み、以下の3つの成果を得た。 1.MPSの未開拓な特性を明白にするため、V-MPS3 (内径約3 nm) に加え、内径約2 nm及び4 nmのMPSの内表面のシラノール基にオキソバナジウムO=V(OSiPh3)3を共有結合させたV-MPS2とV-MPS4をそれぞれ調製した。V-MPS2, V-MPS3, V-MPS4を用いて光学活性アリルアルコールのラセミ化経時変化を測定した。その結果、MPSの細孔径が大きくなるほど基質アルコールの細孔内への進入が容易であることが分かった。更に、V-MPS内部は高極性反応場を形成しており、極性の高い化合物の方が細孔内に進入しやすいことも明らかとなった。 2.動的光学分割においても細孔径と化合物の大きさが反応速度や副反応に密接に関係することが分かった。また、基質アルコールの分子サイズに応じてV-MPS2, V-MPS3, V-MPS4を使い分けることにより、動的光学分割の収率を向上できることが明らかになった。 3.V-MPSはアルコールと化学選択的に反応し、カチオン中間体を経由してラセミ化が進行する。これを応用し、V-MPSを用いてプレニルアルコールからプレニルカチオンを生成し、求核剤と反応させることにより水酸基直接活性化プレニル化反応を開発した。申請者は予備実験で、インドールとプレニルアルコールをV-MPS存在下に反応させると、3-プレニルインドールが生じることを見出していた。そこで、本プレニル化反応を多様な芳香族化合物で検討したところ、ジメチルアニリンを用いた場合においてもプレニル化が進行することを見出した。これはアニリン類の直接的プレニル化の初めての例である。 これらは何れも、メソポーラスシリカの特性を活用する新規反応の開発研究に極めて重要な知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者はH27年度、以下の3つ研究指針をもとに研究を行う。 1. 水酸基の脱離性を高めるためには別の置換基に変換する必要があった。一方、V-MPSにより水酸基の直接脱離を行うことができれば、操作の簡便性に加え共生成物が水のみという環境調和性に優れた反応となる。そこで申請者は1年目に開発した細孔内径の異なるMPSを用い、位置選択的プレニル化反応や新規グリコシル化反応における分子標識や立体制御反応の開発に引き続き挑戦する。 2. 一般的に光学活性な多環状分子は光学活性化合物のジアステレオ選択的Diels-Alder反応や、プロキラル化合物に光学活性触媒を作用させるエナンチオ選択的Diels-Alder反応により構築される。一方、リパーゼ/バナジウム複合触媒による動的光学分割と分子内Diels-Alder反応を連続進行させる申請者の方法は、ラセミ体から一挙に光学活性な多環状分子を定量的に構築する新たな不斉合成法になる。そこで、本多環状分子構築法の条件を精査すると共に一般性を明らかにする。 3. 本年度の研究実施計画(2)で開発した多環状分子の不斉構築法をhimbacineやviridinの不斉合成に応用し、本法の実践性の検証と、必要な改良研究を行う。
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Research Products
(2 results)