2014 Fiscal Year Annual Research Report
神経特異的中間径フィラメントたんぱく質の細胞内動態とその調節機構の解明
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14J06053
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 文哉 東京医科歯科大学, 医歯学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 中間径フィラメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は(1) 重合動態素過程の蛍光偏光顕微鏡観察、および(2) 生理的重合体表面の液中高分解能原子間力顕微鏡観察のそれぞれについて、以下の通り研究を実施した。 (1) GFP融合ニューロフィラメントMたんぱく質(GFP-NF-M)の蛍光偏光顕微鏡観察 まず、GFP-NF-M重合体が蛍光異方性を持つように設計した、リンカーその他の配列が相異なる種々のGFP-NF-Mのシリーズを作製した。これらをそれぞれ培養細胞内で発現させて、蛍光異方性の有無をスクリーニングした。解析の結果、従前のC末側への固定的な標識に加えて、NF-Mの中央桿状ドメインのN末側への標識についても、当該条件を満たす融合たんぱく質(constrained GFP-NF-M)を得た。Constrained GFP-NF-Mの共重合が促進される条件を更に検討し、また当該遺伝子を運ぶアデノウイルスベクターを作製した。今後、constrained GFP-NF-Mを用いた細胞内重合動態の蛍光偏光顕微鏡観察について、質の高い観察例を更に蓄積していく予定である。また、スクリーニング結果を受けて、constrained GFP-NF-M遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作製を準備している。 (2) ニューロフィラメント重合体表面微細構造の原子間力顕微鏡観察 培養細胞内で発現・重合させたニューロフィラメント線維を露出させるため、細胞膜接着剥離法の条件の検討を重ねた。最適化された条件で作製した試料を原子間力顕微鏡で観察したところ、ニューロフィラメントとして矛盾しない線維状構造を遺残細胞膜上に認めた。観察された幾つかの線維の形態学的特徴は一様でなく、固定状態その他の状況により異なる様相を呈すると考えられた。現在、より高解像度での観察を可能にするべく、生理的重合体線維の基板への強い固定を穏やかな条件下で実現する新たな方法を複数開発中である。 以上の成果の一部は、第120回日本解剖学会総会・全国学術集会と第92回日本生理学会大会との合同大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、神経系中間径フィラメントの重合動態素過程を明らかにするための高時間・空間分解能(一分子レベル・実時間に近い状況下)で蛍光偏光顕微鏡観察に関しては、現在までに、蛍光異方性を有するGFP融合ニューロフィラメントMたんぱく質(constrained GFP-NFM)の作製に成功しており、これを運ぶウイルスベクター等を用いて観察データを蓄積・解析する段階に来ている。 また、神経系中間径フィラメント生理的重合体表面形態の超解像原子間力顕微鏡観察については、当初の細胞膜剥離法による線維の露出条件を最適化し、実際の観察を行うことができた。試料の化学固定による影響や線維とその下の面との接着の強さなど、高解像度観察実現のための新たな課題にも直面したが、これを回避・克服するための工夫を行っているところであり、更なる条件検討を重ねている。 以上のように、研究全体としては目標に向かって進んでいると考えられ、上記区分の通り自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
神経系中間径フィラメントたんぱく質重合動態の蛍光顕微鏡観察について。培養細胞株および海馬初代培養神経細胞を使用し、通常の蛍光たんぱく質標識ないしconstrained taggingによる蛍光標識を施した中間径フィラメントたんぱく質を発現・重合させる。その重合動態について、全反射照明法および薄層斜光照明法によって、米国ウッズホール海洋生物学研究所Eugene Bell Center所有の蛍光顕微鏡を使用して観察し、それぞれ観察例数を増やしながら逐次解析する。偏光蛍光顕微鏡観察や二色同時の蛍光顕微鏡観察等を併用し、重合動態の素過程を調べる。これに加えて、脊髄後根神経節または前角細胞で蛍光たんぱく質融合ニューロフィラメントMたんぱく質を発現するトランスジェニックマウスを作製し、麻酔下に坐骨神経を露出させ、(偏光)蛍光顕微鏡で実時間下観察を行う。 神経系中間径フィラメントたんぱく質重合体の液中高分解能観察について。培養細胞株内で発現させた神経系中間径フィラメントたんぱく質の重合体について、これを重合体のまま液中へ取り出して基板に接着させる。作製した試料を金沢大学ナノバイオ工学研究室へ持参し、超解像原子間力顕微鏡観察を行う。また、海馬初代培養神経細胞や小脳顆粒細胞を使用し、軸索内で重合した神経系中間径フィラメントたんぱく質について、軸索の細胞膜を除去してこれを露出させ、semi in situで原子間力顕微鏡観察を行うための条件検討を進める。適当な試料が準備でき次第、これらも金沢大学にてその微細形態を観察する。 前者の(偏光)蛍光顕微鏡観察は米国ウッズホール海洋生物学研究所Eugene Bell Centerと、後者の液中高分解能原子間力顕微鏡観察は金沢大学ナノバイオ工学研究室との共同研究であるが、いずれも報告者自身が試料を作製し、現地で実際の計測にも従事する。
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Research Products
(1 results)