2014 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内膜細胞で発生する分子振動リズムの生理的役割の解明
Project/Area Number |
14J06117
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諌山 慧士朗 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | Uterine cellular clock / Prostaglandin / REV-ERB alpha |
Outline of Annual Research Achievements |
生体時計は睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌、脂質代謝など様々な生理現象のリズムを調節する。約24h周期のリズムを生みだす分子機構(ペースメーカー)は、時計遺伝子およびタンパク質によって調節される転写/翻訳のフィードバックループによって成立している。着床、胎盤形成の場となる子宮内膜においてもペースメーカーが存在し時計遺伝子が概日的に発現するが、その機能に関しては殆ど解明されていない。本研究は、ペースメーカーの生理学的機能の解明を目的に、主に妊娠や発情回帰に関わるプロスタグランジン(PG)合成律速酵素遺伝子の発現制御に焦点を当て,ラットおよびウシの子宮内膜細胞を用いて細胞生物学的に解析した。結果、ラットおよびウシ子宮内膜細胞におけるペースメーカーの周期的な振動によって、特に時計タンパク/核内受容体REV-ERBαの抑制作用を介して、Ptgs2の転写およびPG生成がコントロールされることが分かった。このことは哺乳類を通じて、子宮内膜細胞で発生するペースメーカーの振動によって妊娠成立や黄体退行といった生殖現象が制御されるということを示唆するものである。また同時に、シフトワーク環境による概日時計の乱れが不妊のリスクを増加させること、また時計遺伝子ノックアウトマウスは不妊であることは、中枢や卵巣の他に、子宮におけるペースメーカーの異常も要因の一つであることを示唆している。本結果は生殖および時間生理学において新たな知見を提供している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択課題「子宮内膜細胞で発生する分子振動リズムの生理学的役割の解明」のテーマのもと、ラットとウシの子宮内膜におけるペースメーカーの生理機能を解明することを目的として研究を遂行した。結果、査読付き国際誌に主著書者として 2編、共著者として1編の業績を残した。ラットでは時計タンパクREV-ERBαが子宮内膜細胞の脱落膜化に重要であること解明した(Isayama et al., 2015; Tasaki et al., 2015)。平行していたウシでの研究でも同様にREV-ERBαが子宮内膜細胞のプロスタグランジン合成に関与することを解明した(Isayama et al., 2014)。以上の状況から、研究は順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に着床期以後、胎盤形成の初期段階に相当する脱落膜化期子宮ではペースメーカーの衰退が観察されている(Uchikawa et al., 2011)、本研究は衰退を招く要因(入力系)と衰退によって生じる変化(出力系)の解明を目指した。入力系として胚の子宮内膜のペースメーカーに対する影響、出力系として特に着床期以後における時計機構の衰退に着目し、衰退を招く要因(入力系)と衰退によって生じる変化(出力系)の解明を目指している。1年目は出力系の方を主に解析し、報告した。1年目の知見を参考にしつつ、2年目は入力系のほうに重点を置き、ペースメーカ衰退の要因について解析を行っていく。
|