2015 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴDNAカプセルをアジュバントとする乳酸菌経口ワクチンの創製
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14J06317
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
重盛 駿 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 乳酸菌組換え体 / オリゴDNAカプセル / ヘムオキシゲナーゼ-1 / インターロイキン-6特異的抗体 / 炎症性腸疾患 / 急性大腸炎 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「乳酸菌組換え体(gmLAB)」と「オリゴDNAカプセル」という二種の経口素材を用い、原因不明の難病として知られる炎症性腸疾患(IBD)の新しい予防・軽減戦略を開発することを目的としている。平成26年度は、優れた抗炎症作用が期待される「ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)」もしくは「インターロイキン-6特異的抗体(IL6scFv)」を分泌する乳酸菌(Lactococcus lactis)組換え体の構築に成功し、産生タンパク質の生理活性を明らかにした。平成27年度は、HO-1を分泌するL. lactis組換え体(NZ-HO)の抗炎症効果を、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に誘導される急性大腸炎のモデルマウスを用いた経口投与試験にて検討し、以下の成果を得た。 1. 経口投与したNZ-HOは、生きて大腸に到達し、大腸粘膜において組換えHO-1を分泌する:健常マウスもしくは3%DSSを含む飲料水を摂取させ急性大腸炎を誘導したマウスに、NZ-HOを経口投与した。同マウスの大腸より、NZ-HOの生菌を回収することに成功した。また、大腸粘膜における免疫組織化学解析から、組換えタンパク質特異的抗体(抗His-tag抗体)の陽性反応を得た。 2. NZ-HOの経口投与は、急性大腸炎を軽減する:マウスに3%DSSを含む飲料水を5日間自由摂取させ急性大腸炎を誘導した。DSSの投与2日前から投与最終日まで、生理食塩水(PBS)、ベクターコントロール株(NZ-VC)もしくはNZ-HOを1日1回経口投与した。NZ-HO投与群は、PBSおよびNZ-VC投与群と比較して、大腸炎症状(体重減少・下痢・血便の肉眼症状、組織損傷に伴う大腸の短縮および病理組織学的所見)が有意に改善した。また、NZ-HOは、大腸におけるサイトカイン(免疫調節分子)ネットワークを有益に調節することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、NZ-HOの大腸炎軽減効果を、マウスを用いたin vivo試験にて実証し、同gmLABを腸炎の新規予防/治療ツールとして開発することに成功した。また、2件の学会発表および1報の原著論文にて研究成果を公表するに至り、内1件の学会発表において発表賞(日本畜産学会第120回大会優秀発表賞)を受賞することができた。以上より、当初の研究計画を達成したことに加え、研究成果を発表し、高い評価を得たことから、「当初の計画以上に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、急性大腸炎モデルマウスにおいてNZ-HOの投与量を比較検討し、大腸炎軽減における最適投与量を決定する。また、IL6scFvを分泌するL. lactis組換え体の抗炎症効果を、同様の大腸炎モデルマウスを用いた経口投与試験において検討する。最後に、本研究で作出したL. lactis組換え体とオリゴDNAカプセルとの併用経口投与試験を行い、オリゴDNAカプセルの抗炎症アジュバントとしての利用価値を検証するとともに、「乳酸菌組換え体」+「オリゴDNAカプセル」のIBD予防/治療戦略としての有用性を考察する。
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Research Products
(5 results)