2014 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門におけるP-glycoprotein輸送機能の病態変動制御機構
Project/Area Number |
14J06383
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
星 裕太朗 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / P-glycoprotein / LC-MS/MS / リン酸化プロテオミクス / 定量標的絶対プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、血液脳関門におけるP-glycoprotein(P-gp)輸送機能の新規制御分子を網羅的プロテオミクスによって同定し、そのタンパク質のリン酸化修飾に伴うP-gpの輸送機能の変動の関係を明らかにすることを目的としている。本年度は、ストレス病態モデルとして過酸化水素水(H2O2)を曝露したヒト脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3細胞)を用いて、P-gp輸送活性の制御機構を解明した。 20分間のH2O2曝露によってP-gpを介したvinblastineの排出輸送活性がH2O2濃度依存的に有意に低下した。同条件でP-gpのタンパク質発現量は細胞膜画分において有意に低下し、全細胞抽出物においては変動しなかった。よって、P-gpの内在化によって輸送活性が低下したことが示された。さらに、P-gpの内在化割合は輸送活性の低下割合よりも小さいことから、P-gpの単分子輸送活性も低下していることが示唆された。 リン酸化プロテオミクス解析の結果、H2O2曝露によって足場タンパク質であるcaveolin-1 (Cav1)のリン酸化が顕著に増加した。同時に、tyrosine protein kinase Src (Src)がリン酸化されていたことから、Src-Cav1のリン酸化情報伝達に着目した。SrcによるCav1のリン酸化を阻害した結果、H2O2によるP-gp輸送活性の低下が一部抑制された。さらに、Cav1のY14リン酸化はP-gpの輸送活性の変化と良好に相関した。以上の結果から、酸化ストレス条件下のhCMEC/D3細胞において、P-gpの輸送活性はSrc-Cav1のリン酸化に制御されることを明らかにした。特に、制御タンパク質のリン酸化とP-gp輸送活性変化の量的な相関関係は、血液脳関門のリン酸化情報伝達の定量的解明に向けた重要な知見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画していた「病態時のリン酸化量主要変動分子の同定」について、in vivo実験に先立ち、in vitroの実験系を用いることで、目的とした網羅的なリン酸化タンパク質の同定法を確立した。また、次年度に計画していた「P-gp輸送活性の制御分子の特定」にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した手法をin vivoの実験系に適用し、単離脳毛細血管での解析を加速させる予定である。また、絞り込んだ他の候補分子についても解析し、さらなる制御分子の探索を進める予定である。
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Research Products
(1 results)