2014 Fiscal Year Annual Research Report
水源環境保全に向けた環境支払いの責任と費用負担をめぐる研究
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14J06423
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
石倉 研 一橋大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 水源環境保全 / 環境支払い / 責任と費用負担 / 受益者負担 / 原因者負担 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水源環境保全に関する環境支払いを、責任と費用負担の観点から検討し、望ましい環境支払いの制度設計に寄与することが目的である。2014年度においては、本研究の基礎作業となる文献サーベイを中心に行い、また、調査対象である神奈川県の水源環境保全・再生施策に関する資料収集や、中国太湖流域で取り組まれている生態環境補償の現地調査も実施した。 文献サーベイでは、水源環境保全に関する従来の研究の整理や、環境支払い論に関する先行研究の精読を行なうとともに、責任と費用負担という視点を深化させるために、制度派環境経済学者の1人であるK.W.カップの著作の読み込みを行なった。 神奈川県における水源環境保全・再生の取り組みについては、修士論文以来取り組んでいるが、継続して県政情報センターや公文書館等で、財政データや制度導入時の会議資料等の資料収集を実施した。こうした成果の一部は、『緑のダムの科学』に所収された論文としてまとめることができた。今後は更に事例を掘りさげた分析を行ない、学会誌への投稿を予定している。 中国の現地調査では、無錫市環境保護局にて、生態環境補償に関するヒアリングの実施と、太湖流域の現地視察を行なった。生態環境補償は性質の異なるものが含まれる言葉であり、無錫市においては汚染者に対する移転補償や、汚染者による下流への補償が行なわれている。先ほどの神奈川の事例とは、異なる方法で水源環境保全に取り組む事例であり、国際比較を行ないながら、今後、責任と費用負担のあり方を検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、先行研究のサーベイと整理を行ないつつ、海外への現地調査も行なうことができた。ただし、日本の事例については、神奈川県の事例を扱うのみにとどまっており、2015年度においては、日本国内の現地調査も進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度においては、2014年度に引き続き、環境支払いに関する理論的研究を進めていく。実証面では、今まで研究を進めてきた神奈川県以外の地域についても調査を行う予定である。具体的には、水道料金に上乗せをして水源林保全の財源調達を実施している愛知県豊田市の水道水源保全基金や、山梨県道志村に水源林を所有する神奈川県横浜市が水源林保全のために創設した道志水源基金等、日本国内における調査地を広げていく予定である。事例分析では、どのような費用負担で財源調達が行なわれているか、どのような事業を対象に支払いが行なわれているか、を明らかにしていきながら事例を積み重ねつつ、比較研究を実施することで、現状の制度の課題や意義についても論じていく。
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Research Products
(4 results)