2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06433
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 賢一郎 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | コンピュテーショナルフォトグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者が当該年度で実施した研究の大きな成果は,半透明物体内部を鮮明に撮影する手法を明らかにしたことである.半透明物体内部を撮影する際には,光が物体内部で散乱することによって,視認性が低下するという問題がある.また,様々な深さの層からの反射光が計測されるため,観測が重なり合うという問題もある.この成果を達成するために,申請者は主に以下の2つの項目を明らかにした. 【1.半透明物体内部の光のふるまいをモデル化】 半透明物体名部での光の現象が,どのように伝播し広がるかを光輸送方程式に基づき,モデル化した.具体的に,光の到達深度が深くなるほどよりボケるという現象を深さ依存の点広がり関数として表現し,複雑な半透明物体の見えがどのように表現できるかを明らかにした. 【2.鮮明化を行う画像処理手法の確立】 上記項目1で明らかにした光のふるまいの特徴を利用し,新たに,多重高周波照明法と呼ぶ,複数の空間周波数を用いたパターン投影および画像処理方法を開発した.本手法は,深さに応じて光の広がり方が異なることと,投影するパターンの空間周波数を対応付けることによって,半透明物体内部の特定の層を分離すると同時に鮮明な画像を取得することができる.また,どの深さに可視化したい重要な層が存在するのかということを疎な表現を用いた最適化問題として定式化し,推定する方法についても同時に明らかにした.本手法の有用性は,シミュレーションによって数値評価するとともに,実シーンにおいて,油絵の下に隠された下絵や,汚れによって不鮮明となった壁画等を鮮明に復元することができることを実験によって実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の予定通り,2つのサブテーマに取り組んだ.まず,半透明物体内部の光の振る舞いを深さ依存PSFを用いてモデル化することで,撮影画像が不鮮明となる仕組みを明らかにした.次に,深さ依存PSFの周波数特性を利用し,複数の周波数でのパターン投影によって,ある特定の深さの層を鮮明に撮影する手法を開発した.以上のことから,本研究課題は当初の計画通りに進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,半透明物体内部の光の散乱をモデル化し,その光の振る舞いの特性を利用することで,物体内部の特定の深さの層を鮮明に可視化する手法を開発した.しかしながら,本手法を適用できる物体は,平面かつ層構造を持つ物体に限られており,表面が曲率を持つような一般物体では,光の屈折現象により鮮明な可視化ができないという問題がある.そのため,今年度は,光の屈折現象を考慮に入れた光の振る舞いをモデル化する必要がある.また,材質によって異なる光の吸収率を考慮に入れていなかったため,不要なアーチファクトが観測されていた.光の吸収についても同様にモデルに組み込んでいく必要があると考えられる. また,近年,Time of Flight (ToF) カメラと呼ばれるデバイスが安価に入手できるようになったこともあり,ToFカメラを用いた研究が急速に広がりつつある.ToFカメラは,光の進行速度を利用した深度センサであるが,光のセンサへの到達時間を計測するといった用途でも利用可能であると考えられる.そのため,本研究でも,光の振る舞いを,新たに,時間軸に対してもモデル化し,その情報を利用した光線解析についても検討していきたい.
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Research Products
(4 results)